【生物基礎】タンパク質合成の学習を通して自分の体のでき方を理解する【授業実践備忘録】
遺伝子は形質をつくるもとと定義されますが、言い換えれば、自分自身の体をつくる設計図となります。
それを実際の物質に置き換えると、DNAの塩基配列をもとにしてタンパク質を合成することになります。
この単元は分子生物学を学ぶ上で必ず理解すべきところですが、高校生にとっては自分事としてとらえにくく、とっつきにくいと感じがちのようです。
そこで今回の記事では、DNAからのタンパク質合成=遺伝子の発現についての私の授業実践について紹介致します。
対象
高校1年生
クラスによって25〜39人というように人数に幅があります。
生徒観
正直なところ学力はあまり高くはないのですが、授業に対しては前向きに取り組んでいます。
授業では挙手により積極的に発言したり、活発に話し合いをしています。
教材
教科書と自作の授業プリント(ワークシートと知識の整理を兼用)
導入
遺伝子から形質ができること=DNAの塩基配列をもとにタンパク質をつくることであり、その過程はセントラルドグマで表されることを示し、復習としました。
私が実際に高校で授業をした際、DNAからタンパク質ができることを学ぶ意味がつかめていない生徒が多くいました。
そこで、小中学校での給食や家庭科の授業の中で、タンパク質=自分の体を作る栄養素であると学んだことを生徒に思い出してもらい、タンパク質を食べたらどのように自分の体ができるかを知ることにつながると説明した。
A.タンパク質
私が授業を担当している生徒は高校で化学を履修していないので、構造式を使わずにタンパク質はアミノ酸が多数結合してできていることと、アミノ酸の種類は同じでも結合する順番によってできるタンパク質の性質は変わることを説明しました。
また、高校卒業後は家政・看護・医療・スポーツ系に進学を希望する生徒のために、必須アミノ酸についても紹介し、覚えておくことを勧めました。
B.RNA
DNAからいきなりタンパク質ができるわけではなく、RNA(リボ核酸)が介在して指定されたアミノ酸が運ばれ、タンパク質が合成されます。
そこで、RNA(リボ核酸)をつくるヌクレオチドの構造と、RNAが直線状の1本鎖であることを説明しました。
また、RNAにはmRNA(伝令RNA)・tRNA(運搬RNA)・rRNA(リボソームRNA)の3種類あることを紹介しました。
C.タンパク質の合成(遺伝子の発現)
私の授業ではDNA→RNA→タンパク質の合成について説明する前に、レストランで料理を注文してから手元に届くまでの流れを説明し、タンパク質合成のイメージづけを行いました。
転写
私の方でDNAの塩基配列を示し、それに相補的なmRNAの塩基配列を生徒自身で考えてもらうワークを行いました。
転写というのは細胞の核の中でDNAからmRNAが合成されることですが、レストランの客席でメニュー表をもとにお客様が注文した料理を、店員さんが伝票にまとめることに例えて説明しました。
また、授業時間に余裕のあるクラスでは、なぜ塩基3個で1種類のアミノ酸が指定されるかについても説明しました。
翻訳
翻訳というのはmRNAの塩基配列を基に細胞質で指定のアミノ酸が誘導されてタンパク質が作られる過程ですが、これは客席でまとめた注文伝票を厨房に持っていき、料理人に料理を作ってもらうことに例えて説明しました。
mRNA中の3個の塩基が1組となって、1種類のアミノ酸が誘導されます。
この塩基の並びをコドンと呼びますが、教科書に示されている遺伝暗号表をもとにして、生徒自身で誘導されるアミノ酸を考えてもらいました。
ただ、mRNAのコドンによってアミノ酸が自動的に運ばれるのではなく、tRNAがアミノ酸を運んできます。
このtRNAの塩基配列(アンチコドン)はmRNAのコドンと相補的な関係になっていることで「認証」が行われるというイメージづけを実際の授業で行いました。
授業実践の振り返り・反省
私自身の学生時代、DNAからタンパク質ができることがどうしても納得がいかず、理解に苦しみました。
タンパク質の合成が遺伝子から形質ができることにつながるということを、教員になってからようやく理解できました。
現在の教育課程では、高校1年生の段階からでもDNAからのタンパク質合成が理解できるようにしなければならないのですが、セントラルドグマというフレームを理解しておくことと、レストランで料理を注文してから手元に届くまでの流れのイメージづけをすると、生徒にとっては理解しやすくなるようです。
しかし、本来であればリボソームも絡めて説明すべきなのですが、リボソームは上位科目の「生物」でようやく出てくることもあって深く教えられず、高校1年生向けの授業では「本当はリボソームっていうまな板で料理されてタンパク質ができるんだよ」ということを口頭で伝えるに終わってしまいました。
実際にこの単元の内容をテストで出題したところ、mRNAのコドンではなくtRNAのアンチコドンによって誘導されるアミノ酸が指定されると勘違いした生徒が多くいました。
このあたりは授業・指導をされる上で注意が必要だと思います。
また、mRNAの3個の塩基の配列(コドン)によって1種類のアミノ酸が指定されることにつきましては、数学Aで学習する順列・組み合わせとも関連していることを伝えたら、生徒の反応が良かったように思えます。
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文責:滝沢