【生物基礎】血液循環〜酸素解離曲線を使って酸素の運搬量を考える〜【授業実践備忘録】
最近の授業実践備忘録は化学基礎のばかり扱っていましたが、久々に生物基礎の授業実践についても綴りたいと思います。
今回は血液循環について。
血液循環において重要なのは、赤血球に含まれるヘモグロビンが酸素をどのように運搬するかを考えることです。
血液循環
血液循環は肺循環と体循環が繰り返されることで構成されています。
肺循環とは肺と心臓の間、体循環とは心臓と全身の細胞(組織)の間での血液の流れをさします。
しかし、実際は、肺から酸素を取り込み、肺静脈→心臓→大動脈→全身の細胞という経路で酸素が全身の細胞に供給されます。
逆に、全身の細胞→大静脈→心臓→肺動脈→肺という経路で二酸化炭素が運搬され、体外へ排出されます。
つまり、酸素と二酸化炭素を運搬する上では、肺循環と体循環が交互に繰り返されているわけです。
ヘモグロビンと酸素の結合
酸素を運搬する役割は赤血球の中にある色素・ヘモグロビンが担っています。
酸素を抱えていないヘモグロビンは暗赤色をしていますが、酸素を抱えた状態の酸素ヘモグロビンになると鮮紅色になります。
特に、周りの酸素濃度が高くなると、酸素ヘモグロビンになりやすくなり、逆に、酸素濃度が低くなると、酸素を手放してヘモグロビンになりやすくなります。
動脈と静脈 / 動脈血と静脈血
中学校2年の理科で血液循環はすでに学んでいますが、高校生に実際に聞いてみたところ、「動脈」「静脈」「動脈血」「静脈血」の違いがよくわからないという意見が多数ございました。
動脈:心臓から他の器官へ血液が流れ出す
静脈:他の器官から心臓へ血液が流れ込む
動脈血:酸素(酸素ヘモグロビン)を多く含む血液
静脈血:酸素(酸素ヘモグロビン)が少ない血液
ここで注意したいのは動脈を流れるから動脈血、静脈を流れるから静脈血ではないということです。
このあたりを生徒は勘違いしやすいところですが、肺動脈では静脈血が流れ、静脈では動脈血が流れます。
酸素解離曲線
肺で取り込んだ酸素がどの程度の割合で全身に運ばれるかは、酸素解離曲線によって表されます。
酸素解離曲線は2本の曲線グラフで示されますが、これは体の場所によって酸素と二酸化炭素の濃度が違うことによります。
私の授業では肺(肺胞)と全身の組織のそれぞれに分けて、曲線の右側に棒グラフと20個の赤血球のモデルを表しています。
まず、20個のヘモグロビンのうちの19個が酸素を抱える図を示し、肺ではすべてのヘモグロビンが酸素を抱えるわけではないことを説明します。
酸素を抱えて酸素ヘモグロビンとなり、全身の組織に移動すると、酸素が組織の細胞に渡され、酸素ヘモグロビンの数が減ります。
その後、副教材の問題集を使いながら、血液中のヘモグロビンが酸素を供給する割合と、ある一定量の血液が運ぶ酸素の体積を算出する問題演習を行います。
しかし、生徒の理解が追いつかず、問題演習では多くの生徒が苦戦する姿が見受けられますが、血液がどれだけの酸素を全身に運ぶかを具体的かつ定量的に考えることで、個々の生徒に実感を持ってもらうという点で意味はあると思います。
二酸化炭素の運搬
これは補足程度で軽く説明するにとどめましたが、二酸化炭素は赤血球の間でバケツリレーを行いながら運ばれていきます。
組織から二酸化炭素が赤血球にわたると炭酸H₂CO₃分子となり、水素イオンを1個かかえ、炭酸水素イオンを血しょう中に放出します。
その後、別の赤血球がその炭酸水素イオンを取り込み、予め抱えていた水素イオンをくっつけて炭酸分子にします。
赤血球が肺にたどり着いたら、炭酸分子は二酸化炭素分子と水分子に分解され、二酸化炭素分子は体外に放出されます。
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文責:滝沢