【世界が広がる大人のサイエンス】#13 放射線と同位体②【物理学】
2026年が始まりましたが、皆さまは年末年始をどのようにお過ごしでしょうか。
本記事では、2025年12月に引き続き「放射線と同位体」をテーマに、一般の大人の方にもできるだけ分かりやすく解説していきます。
「放射線」という言葉に対して、不安や怖さを感じる方も少なくありません。
確かに、放射線は使い方や量を誤れば人体に影響を及ぼす可能性があります。
その一方で、医療や研究、産業など、私たちの生活を支えている側面もあります。
そこで今回は、放射線を感情ではなく「量」という視点でとらえ、どの程度で影響が生じるのかを中立的に考えることを目的とします。
原子の構造と同位体の振り返り
これまでの記事でも紹介してきた通り、原子は陽子・中性子・電子という3種類の粒子から構成されています。
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陽子:正の電気を帯びる
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中性子:電気を帯びない
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電子:負の電気を帯びる
また、陽子の数=原子番号、陽子と中性子の数の和=質量数と呼び、元素記号を用いることで原子の構成を簡潔に表すことができます。


同じ元素でも、中性子の数が異なる原子を同位体(アイソトープ)と呼びます。
その中でも、放射線(α線・β線・γ線など)を放出する同位体を、放射性同位体(ラジオアイソトープ)といいます。
原子核の壊変について(少し詳しく)
前回の記事「#12 放射線と同位体①」では、原子核の壊変には主に3種類があることを紹介しました。
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α壊変
ヘリウム原子核(α粒子)を放出 → 原子番号が2減り、質量数が4減る -
β壊変(β⁻壊変)
電子(β線)を放出 → 原子核内の中性子が陽子に変わり、原子番号が1増える
※β線(電子)のエネルギーは一定ではなく、余ったエネルギーをニュートリノが持ち去る
※β線のエネルギーは「分布」を持ち、最大エネルギーだけが代表値として示される -
γ壊変
高エネルギーの電磁波(γ線)を放出 → 原子番号・質量数は変わらない
※α壊変やβ壊変の直後に、原子核が余分なエネルギーを放出する場合に起こる
補足として、β壊変にはもう一つ、β⁺壊変(陽電子放出)があります。
これは、陽子が中性子に変化し、陽電子(正の電気を帯びた電子)とニュートリノを放出する壊変です。
この陽電子は、医療分野で用いられるPET(陽電子放射断層撮影)に応用されています。
医療診断の現場で、放射線が役立っている一例といえるでしょう。

放射性同位体が壊変するまでの時間 ― 半減期
放射性同位体は、種類によって壊変の速さが大きく異なります。
数分で壊変するものもあれば、何十億年もかかるものもあります。
この壊変の速さを表す指標が半減期です。
半減期とは、放射性同位体の原子核の数が、初めの半分になるまでにかかる時間をさします。
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半減期が短い → 放射線を出す能力(放射能)が強いが、短期間で減少する
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半減期が長い → 放射能は弱いが、長期間にわたって存在する
「危険かどうか」は、半減期の長短だけでは判断できない点も重要です。

放射線の量を表す3つの単位
放射線の影響を考える際、次の3つの単位が用いられます。
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ベクレル(Bq)
1秒間に壊変する原子核の数 -
グレイ(Gy)
吸収線量 → 物質1kgあたりが吸収したエネルギー量 -
シーベルト(Sv)
人体への影響を考慮した線量(等価線量)→ 放射線の種類によって重み付けが異なる-
X線・β線・γ線:1Gy ≒1Sv
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α線:1Gy ≒ 20 Sv
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これらの関係は分かりにくいため、本記事では「電球(光源)・光の量・人体への影響」というアナロジー(類似性)で板書図に示しています。

人体への影響を評価する考え方
人体の臓器や組織は、放射線への感受性が異なります。
そこで、以下の3項目を考慮して算出したものが実効線量(Sv)です。
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各臓器の吸収線量(Gy)
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放射線の種類による重み付け
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臓器ごとの重み付け
この実効線量を用いることで、人体全体への影響を評価します。

放射線はどの程度で危険なのか
実は私たちは、日常生活の中で常に放射線を浴びています。
これを自然放射線といい、日本では年間平均で約2.1 mSvとされています。
さらに、医療検査(X線・CT)、飛行機での移動、大地や食物からの放射線など、さまざまな場面で放射線を受けています。
下の板書画像では、日常生活レベルから健康影響が生じうるレベルまでを、実効線量で比較しています。

放射線を受ける形 ― 被曝の種類
人体が放射線を受けることを被曝(ひばく)といいます。
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外部被曝
体の外にある放射性物質から放射線を浴びる -
内部被曝
呼吸・飲食などを通じて体内に放射性物質を取り込み、内部から放射線を浴びる
また、放射線による影響は次のように呼び分けられます。
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数週間以内に現れる影響 → 急性障害
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長い潜伏期間の後に現れる影響 → 晩発障害
とりあえずここで一息
放射線は自然界にも存在し、日常的に浴びているものです。
しかし、量が大きくなれば人体に影響を及ぼします。
そのため、外部被曝を減らすための三原則が知られています。
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放射性物質から距離をとる
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放射線を遮る物質を間に置く
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放射線を受ける時間を短くする
一方で、放射性物質は医療・研究・産業など、現代社会に欠かせない形で利用されています。
次回の記事では、放射性物質・放射性同位体が現在どのように活用されているのかを、具体例とともに紹介していく予定です。
今日の問い
放射線は“危険なもの”なのか、それとも“使い方を考えるべきもの”なのか。
あなたは、どんな情報をもとに判断していますか?
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