【高校化学基礎】元素記号と元素名【授業図鑑】
今回の記事では、物質を構成する成分である「元素」の考え方と、元素記号・元素名を扱う授業実践例を紹介します。
「元素」という言葉は中学校理科でも学びますが、高校の授業では、「元素」と「原子」の違いが曖昧なまま学習を進めている生徒が少なくありません。
また、どの元素記号と元素名を覚えるかは、授業を担当する先生や学校によっても異なります。
そこで本記事では、元素と原子をどのように区別して説明するか、元素記号を書くときに何を確認するか、私が高校化学基礎の授業でどの元素について学習の目標としているかをまとめます。
「元素」と「原子」は何が違うのか
「原子」と「元素」は深く関係していますが、同じものではありません。
原子:物質を構成する基本的な粒子。原子核と電子からできており、一つ一つの粒子として考えます。
元素:原子番号、すなわち原子核に含まれる陽子の数によって区別される原子の種類。
例えば、原子核に陽子を6個もつ原子は、すべて炭素原子です。
そして、その原子の種類を炭素元素といいます。
中性子の数が異なる同位体であっても、陽子の数が同じなら、同じ元素に分類されます。
授業では、原子を「一つ一つの粒子」、元素を「原子番号によって分けた原子の種類」と整理すると、両者を区別しやすくなります。
「原子は具体的な粒子、元素は分類の概念」という説明も入口として有効ですが、最終的には「元素は陽子数で決まる」という定義につなげることが大切です。
また、「水は水素元素と酸素元素からできている」「水分子1個には水素原子2個と酸素原子1個が含まれる」と表現を使い分けると、元素・原子・分子の関係を具体的に確認できます。
元素記号の表し方
元素記号は、世界共通で用いられる元素の略号です。
現在正式に命名されている元素の記号は、1文字または2文字のアルファベットで表されています。
表記するときは、次の点を確認します。
- 1文字目は必ず大文字にする。
- 2文字目がある場合は必ず小文字にする。
- 印刷物では、斜体ではなくブロック体で表す。手書きでも、文字を崩しすぎず明瞭に書く。

例えば、ナトリウムの元素記号は Na、塩素は Cl です。NA、na、CL、CI と書くと、正しい元素記号にはなりません。
特に注意したいのが、塩素 Cl の2文字目の小文字の l(エル) です。
大文字の I(アイ) や数字の 1 と混同しないよう、前後の文字との高さの違いが分かるように丁寧に書かせます。
小文字の l を筆記体風に書かせる指導も見られますが、正式な元素記号に「小文字のlだけ筆記体にする」という例外規則があるわけではありません。
元素記号はブロック体で表すのが原則です。
授業では、Cl を一つのまとまりとして、明瞭に書くことを重視するとよいでしょう。
生徒の中には「元素記号はアルファベット1文字で表す」と思い込み、N と a、C と l を別々の記号として捉えてしまうことがあります。
2文字の元素記号では、大文字と小文字を合わせた全体で一つの元素を表すことを、具体例を使って確認します。
覚えておきたい元素記号と元素名
中学校では何を扱うのか
中学校学習指導要領解説では、元素記号の基礎的な例として、H、He、C、N、O、S、Cl、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Fe、Cu、Zn、Ag、Ba、Auなど、その後の学習でよく使うものを取り上げるとしています。
したがって、「中学校では原子番号1〜20をすべて暗記することが全国一律の必須事項」とまではいえません。
実際に扱う範囲や確認方法は、教科書、学校、担当者によって異なります。
私の授業では原子番号1〜20を基礎目標にする
一方、私の化学基礎の授業では、原子番号1〜20の元素記号と元素名を、基礎として身に付けたい目標にしています。
原子番号1〜20の元素は、電子配置と周期表の周期・族との関係、価電子、イオンの生成、化学結合など、後の学習を理解する土台になるためです。
ただし、暗記だけを目的にするのではなく、周期表上の位置や電子配置と結びつけて扱います。

覚え方として語呂合わせを紹介することもありますが、語呂だけで終わらせず、「記号を見て元素名を答える」「元素名を見て記号を書く」「原子番号順に並べる」という三つの方向から確認します。
また、周期ごとに小分けして覚えたり、カードを並べて周期表をつくったりすると、単なる暗記から周期表の構造理解へつなげられます。
21番以降の元素の扱い
原子番号21以降については、すべての電子配置や元素名を一律に暗記させるのではなく、その後の化学の学習、日常生活、産業、環境問題などで登場する元素を選んで紹介しています。
私の授業で取り上げる例には、次のようなものがあります。

ここでも、記号と名称を機械的に覚えるだけでなく、「どこで使われるか」「なぜその記号になったか」「どのような性質や課題があるか」と関連付けて扱います。
日本初の元素・ニホニウム
Nh(ニホニウム)は原子番号113の元素です。
理化学研究所の森田浩介氏を中心とする研究グループが合成し、その発見がIUPACによって認定されました。
元素名「nihonium」と元素記号「Nh」は2016年に正式決定しています。
「最近、日本で発見された元素」とするよりも、「日本の研究グループに発見が認定され、日本発・アジア初の元素名となった元素」と説明すると、その意義がより正確に伝わります。
元素記号の学習にニホニウムを取り入れることは、元素が過去にすべて発見済みだったのではなく、現在も科学者によって合成・確認され、国際的な手続きを経て命名されることを知る機会にもなります。
探究のヒント
元素記号の学習は、暗記だけで終わらせず、記号の由来や元素と社会との関係を調べる探究へ発展させられます。
例えば、Na、K、Fe、Cu、Ag、Auなどは、日本語名や現在の英語名の頭文字と元素記号が一致しません。
「なぜこの記号になったのか」を調べると、ラテン語などの名称や科学史にたどり着きます。
さらに、次のような探究課題が考えられます。
- スマートフォン、硬貨、乾電池、医薬品、食品などに、どのような元素が使われているか調べる。
- 元素記号の由来を、人物、地名、天体、神話、鉱物などに分類する。
- ニホニウムがどのように合成・確認され、正式に命名されたのかを調べる。
調べた結果を、原子番号、元素記号、元素名、記号の由来、用途、性質、注意点の項目で一枚のカードにまとめると、クラス全体で共有できる元素図鑑になります。
授業づくりのご相談・お問い合わせ
元素記号は暗記中心になりやすい学習内容ですが、原子番号、電子配置、周期表、身近な物質、科学史と結び付けることで、「なぜそのように表すのか」を考える授業へ変えられます。
SFB科学教育デザインラボでは、単元構成の見直し、板書・ワークシートの改善、記憶に残る導入、探究課題の設計など、理科授業に関するコンサルティングを行っています。
「暗記だけで終わらない元素記号の授業をつくりたい」「周期表や電子配置まで見通した教材を設計したい」とお考えの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
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