【高校化学基礎】物質の三態と状態変化【授業図鑑】

今回の記事では、高校化学基礎で学ぶ物質の三態と状態変化について、授業で押さえたいポイントをまとめます。
物質の三態と状態変化は、中学校理科の復習から高校化学へ橋を架ける題材です。
粒子の熱運動と粒子間の引力という視点を取り入れることで、後に学ぶ純物質と混合物、蒸留・再結晶などの分離操作、物質の構造と性質の理解にもつながります。

物質の三態と状態変化

物質を構成する粒子には、原子・分子・イオンなどがあります。
私たちが目にする物質は、これらの粒子が多数集まってできています。

身の回りの物質は、通常、固体・液体・気体のいずれかの状態をとります。
この三つの状態をまとめて「物質の三態」といいます。

温度や圧力が変わると、物質は、物質そのものの種類を変えずに別の状態へ移ることがあります。
この変化が「状態変化」です。
代表的な状態変化には、次の六つがあります。

  • 固体 → 液体になる:融解
  • 液体 → 固体になる:凝固
  • 液体 → 気体になる:気化(蒸発)
  • 気体 → 液体になる:凝縮
  • 固体 → 気体になる:昇華
  • 気体 → 固体になる:凝華

液体が気体になる変化をまとめて「気化」といいます。
液体の表面で起こる気化が「蒸発」、液体の内部からも起こる気化が「沸騰」です。

また、気体から固体への変化を「凝華」としていますが、教科書によっては、固体から気体、気体から固体の両方向を「昇華」と表す場合もあります。
授業では、使用している教科書の表記も確認しておくとよいでしょう。

物質の状態と粒子の振る舞い

では、なぜ同じ物質に固体・液体・気体という異なる状態があるのでしょうか。

物質の状態を粒子の視点から考えるときに重要なのが、粒子の「熱運動」と「粒子間の引力」です。
粒子は絶えず熱運動をしています。一方、粒子どうしの間には互いに引き合う力が働きます。
物質の状態は、この二つの影響のバランスによって捉えることができます。

固体

固体では、粒子が規則正しく並び、ほぼ一定の位置を保ちながら振動しています。
熱運動に比べて粒子間の引力の影響が大きいため、粒子は決まった位置から大きく移動できません。
そのため、固体は一定の形と体積を保ちます。

液体

液体では、粒子どうしは近い距離にありますが、固体のような規則正しい配列は崩れています。
粒子は互いの位置を変えながら移動できるため、液体の形は容器に合わせて変化します。
一方、粒子間の距離は大きく変わらないため、体積はほぼ一定に保たれます。

気体

気体では、粒子が互いに離れ、空間を自由に飛び回っています。
気体でも粒子間の引力が完全になくなるわけではありませんが、通常の希薄な気体では、その影響は熱運動に比べて非常に小さくなります。
そのため、気体は容器全体に広がり、一定の形や体積をもちません。
また、固体や液体と比べて圧縮されやすいという特徴があります。

「固体→液体→気体」と変化するにつれて熱運動が活発になり、粒子間の引力による束縛の影響が相対的に小さくなる、と整理すると、生徒は三態の違いを粒子像と結び付けて理解しやすくなります。

状態変化と温度変化

例として、1気圧のもとで18 g(1mol)の氷を一定の割合で加熱する場合を考えます。

氷を加熱すると、まず氷の温度が上がります。
0 ℃に達すると融解が始まり、氷と水が共存します。
すべての氷が水になると、水の温度が再び上がります。
100 ℃に達すると沸騰が始まり、水と水蒸気が共存します。
すべての水が水蒸気になった後は、水蒸気の温度が上がります。

純物質を一定の圧力のもとで状態変化させると、融解や沸騰が続いている間、温度は一定に保たれます。
加えた熱が温度上昇ではなく、粒子の配列を崩したり、粒子間の引力による束縛を弱めたりするために使われるからです。

このとき、加熱の各段階を粒子の視点で整理すると、次のようになります。

1.固体を加熱する

加えた熱によって、一定の位置にある粒子の振動が激しくなり、固体の温度が上がります。

2.固体が融解する

加えた熱は、固体の規則正しい粒子配列を崩すために使われます。
このときに吸収される熱を「融解熱」といいます。
純物質では、完全に液体になるまで温度は一定です。

3.液体を加熱する

加えた熱によって粒子の熱運動が活発になり、液体の温度が上がります。

4.液体が沸騰する

加えた熱は、粒子どうしの引力による束縛を弱め、粒子を気体として引き離すために使われます。
このときに吸収される熱を「蒸発熱」といいます。
純物質では、完全に気体になるまで温度は一定です。

5.気体を加熱する

加えた熱によって粒子の熱運動がさらに活発になり、気体の温度が上がります。

なお、融点や沸点は圧力によって変化します。
また、混合物では状態変化の途中で温度が一定にならないことがあります。
そのため、板書のグラフに「純物質」「1気圧」などの条件を書き添えると、後に純物質と混合物の違いを考える際にも役立ちます。

探究のヒント

状態変化の学習では、「温度が一定なのに、加えた熱はどこへ行ったのか」という問いが、粒子モデルによる説明を引き出す出発点になります。

例えば、氷をゆっくり加熱し、一定時間ごとに温度と物質の様子を記録して、加熱曲線を作成する探究が考えられます。
グラフの傾きが変わる場所や温度がほぼ一定になる区間を見つけ、それぞれの区間で粒子がどのように振る舞っているのかを図や言葉で説明させます。

さらに、次のような問いへ発展させることもできます。

- 氷の質量を変えると、融解にかかる時間はどのように変わるか。
- 加熱の強さを変えると、グラフの傾きや停滞する時間はどう変わるか。
- 純水と食塩水では、加熱曲線にどのような違いが現れるか。
- 気圧が変わると、沸点はどのように変化するか。
- 状態変化中のエネルギーの使われ方を、粒子モデルでどのように表せるか。

実験を行う際は、加熱器具、熱湯、蒸気によるやけどに十分注意し、必要に応じて演示実験や記録動画の分析に置き換えてください。

授業づくりのご相談・お問い合わせ

状態変化は、中学校理科の復習にとどまらず、粒子概念、エネルギー、分離操作、物質の構造と性質へと学びをつなげられる単元です。
一方で、粒子モデルや加熱曲線をどの順番で提示し、どのような問いを置くかによって、生徒の理解の深まり方は大きく変わります。

SFB科学教育デザインラボでは、単元構成の見直し、板書・教材の改善、演示実験や探究活動の設計など、理科の授業づくりに関する支援事業を行っています。
「説明中心の授業から、生徒が粒子の視点で考える授業へ変えたい」「手元の教材を生かして探究的な授業を組み立てたい」とお考えの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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