【化学基礎】物質をつくる粒子と熱運動【授業図鑑】
物質の構成について授業をする順番
多くの「化学基礎」の教科書では、物質の構成について、次の順番で説明されています。
- 純物質と混合物
- 混合物の分離法
- 元素
- 単体と化合物
- 物質の状態と熱運動
この順番には、目に見える物質から、原子・分子・イオンといった小さな粒子へと、段階的に迫っていく流れがあります。
一方、純物質や混合物について学ぶ前に、粒子・元素・状態変化に関する知識を身につけておくと、それぞれの定義をより理解しやすくなるのではないかと考え、私は次の順番で授業を進めています。
- 物質をつくる粒子―原子・分子・イオン
- 粒子の熱運動と状態変化
- 元素
- 単体と化合物
- 純物質と混合物
以前は、3の「元素」を扱った後に原子の構造と化学結合をはさみ、「単体と化合物」から「純物質と混合物」へと進む構成にしたこともあります。
このように、教科書とは反対の方向から授業を組み立てるのは、粒子の視点を出発点として、元素という分類軸、単体と化合物、さらに純物質と混合物へと視野を広げることで、物質の捉え方をイメージしやすくなると考えているためです。
原子・分子・イオン
原子・分子・イオンといった粒子の概念は、中学校2〜3年の理科ですでに学んでいます。私が高校の「化学基礎」で授業開きをするときには、これらの小さな粒子の存在と定義を確認します。
原子:物質を構成する基本的な粒子。化学変化では、それ以上分割されないものとして扱います。ドルトンは1803年に原子説を提唱しました。
分子:複数の原子が結びついてできた、ひとまとまりの粒子。アボガドロは1811年に分子説につながる仮説を発表しました。
イオン:原子または原子の集まりが電子を失ったり受け取ったりして、正または負の電荷を帯びた粒子。ファラデーは1830年代に、電気分解を説明するためにイオンの概念と用語を導入しました。
粒子の熱運動
原子・分子・イオンといった小さな粒子が絶えず不規則に運動していることを理解すると、物質の状態や状態変化を粒子の視点から捉えやすくなります。
私の授業では、冷水と温水に黒いインクを2〜3滴落とし、その広がり方を観察する演示実験を行います。
温水ではインクがより速く広がる様子が見られ、この観察を手がかりに、粒子の拡散と熱運動について考えていきます。
拡散とは、粒子が気体や液体の中で自然に広がる現象です。
その背景には、粒子の不規則な運動である熱運動があります。
なお、この演示実験では温度差による対流もインクの広がり方に影響します。
そのため、観察された現象をすべて拡散によるものと断定せず、「拡散と対流をどのように見分けられるか」と問い返すと、探究的な学びにもつながります。
熱運動とエネルギー
※熱運動とエネルギーについては化学基礎では発展内容になります。
熱運動は、温度が高くなるほど活発になります。気体では、温度が高くなるほど、粒子1個あたりの平均運動エネルギーが大きくなります。
その様子を表したものが、下のグラフ(Maxwell–Boltzmann分布)です。
グラフでは、粒子の速さを横軸、粒子の割合を縦軸とし、0 ℃、1000 ℃、2000 ℃における分布の違いを表しています。

実際に授業をしていると、このグラフの見方が分からないという生徒は少なくありません。
私は、曲線を速さの範囲ごとに区切ったヒストグラムを併記し、「温度が低いときは遅い粒子の割合が大きく、温度が高くなると速い粒子の割合が増える」と説明しています。
また、温度が高くなると曲線の山が低くなり、分布が速い側へ広がることにも注目させます。
熱運動と温度
日常生活で使う温度はセルシウス温度で、単位には「℃」を用います。
歴史的には、水の凝固点を0 ℃、沸点を100 ℃とすることで目盛りが定められました。
一方、化学や物理学では、熱運動の程度と関係する熱力学温度(絶対温度)を用います。
単位は「K(ケルビン)」です。
セルシウス温度を t〔℃〕、熱力学温度を T〔K〕とすると、次の式で換算できます。
T〔K〕= t〔℃〕+ 273.15
高校の計算では、273.15を273として扱うこともあります。
0 Kは絶対零度で、熱力学温度の下限です。
ただし、「0 Kではすべての粒子が完全に静止する」という説明は、量子力学的には正確ではありません。
高校段階では、「熱運動が限界まで小さくなる温度」と捉えるとよいでしょう。
探究のヒント
この授業は、観察して終わるのではなく、条件を変えて確かめる探究へと発展させられます。
例えば、水温、インクの量、容器の形、観察時間などの条件を一つずつ変え、インクの広がり方を比較してみましょう。
動画を一定時間ごとに静止画にし、色の広がった面積や濃さを数値化すれば、定性的な観察を定量的な分析へとつなげられます。
また、「温度による違いは拡散だけで説明できるのか」「対流の影響を小さくするには、どのような実験方法がよいか」といった問いも、探究テーマになります。
授業づくりのご相談
本記事で紹介したように、教える順番や演示実験の位置づけを少し変えるだけでも、生徒が物質を捉える視点は変わります。
SFB科学教育デザインラボでは、授業のねらいに応じた単元構成、問いの設計、実験・探究活動の組み立て、教材の改善など、理科授業に関するコンサルティングを行っています。
授業をより分かりやすく、探究的なものにしたいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
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