【世界が広がる大人のサイエンス】#16 放射線の被ばく―外部・内部の違いと身を守る3原則【物理学】

2025年12月から2026年1月にかけて、「世界が広がる大人のサイエンス」では放射線を取り上げました。
今回は久しぶりの放射線シリーズ。
身近にありながら、少し怖い印象もある「被ばく」について、しくみと身を守る方法を解説します。
これまでの記事はこちらからご覧いただけます。
「被ばく」とは?
被ばくとは、人体が放射線を受けることです。大きく「外部被ばく」と「内部被ばく」に分けられます。
外部被ばく
体の外にある線源から放射線を受けることです。
放射性物質の近くにいる場合のほか、レントゲン撮影でX線を受けることも外部被ばくに当たります。
線源から離れたり、装置からの照射が終わったりすれば、それ以上の被ばくは止まります。
なお、衣服や皮膚に放射性物質が付着した「汚染」がある場合は、衣服を脱いだり洗い流したりすることで影響を減らせます。
内部被ばく
放射性物質を呼吸や飲食、傷口などから体内に取り込むことで起こります。
取り込まれた放射性物質は、体内で放射線を出します。
ただし、放射性物質の壊変や代謝・排泄によって、その量はしだいに減っていきます。
外部被ばくと内部被ばくのどちらも、大切なのは「どちらが怖いか」ではなく、どの種類の放射線を、どのくらいの量、どのくらいの時間受けたかです。
放射線は身近にある
放射線は、原子力施設や病院だけに存在するものではありません。
私たちは宇宙、大地、空気、食べ物などから、日本平均で年間約2.1ミリシーベルト(mSv)の自然放射線を受けています。
一般公衆の「年間1mSv」という線量限度は、自然放射線と医療被ばくを除いた、平常時に管理される放射線源からの被ばくに対する基準です。1mSvを超えた瞬間に危険になる、という境界線ではありません。
被ばく量と健康への影響
下の板書画像では、胸部X線撮影、胃のX線検査、自然放射線など、おおよその被ばく量を比べています。
※医療被ばくの線量は、検査方法や装置、撮影する部位によって異なります。
※健康影響は、被ばくした範囲や時間、治療の有無などによって異なります。
※高線量域の数値は、短時間に全身被ばくした場合のおおよその目安です。

放射線には、細胞内の分子やDNAに変化を与える「電離作用」があります。
私たちの体には傷を修復するしくみがありますが、短時間に大量の放射線を受けると、修復が追いつかなくなる可能性があります。
一方、100mSv以下の低線量域では、放射線による健康リスクの増加を疫学的に見分けることは難しいとされています。
リスクをゼロと決めつけず、必要のない被ばくをできるだけ減らすことが放射線防護の基本です。
被ばくを減らすには?
内部被ばくを防ぐ
内部被ばくを防ぐ基本は、放射性物質を体内に取り込まないことです。
放射性物質の飛散が疑われる場面では、公的機関の案内に従い、マスクの着用や手洗い、食品・飲料水に関する情報の確認などを行います。
外部被ばくを減らす3原則
外部被ばくを減らす基本は、次の3つです。
- 時間:放射線を受ける時間を短くする
- 距離:放射線源から離れる
- 遮へい:線源との間に適切な遮へい物を置く
「短時間で、距離を取り、遮る」。
この3原則は、医療、研究施設、原子力施設、災害対応などで広く用いられています。
放射線を必要以上に怖がるのでも、危険性を軽視するのでもなく、しくみを知って適切に行動すること。
それが放射線を「正しく恐れる」第一歩です。
SFBでは、放射線をはじめ、資源・エネルギー・環境をテーマにした科学教育や出前授業を行っています。
学校・地域講座・各種イベントなど、対象に合わせた内容をご相談いただけます。
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