【高校生物基礎】プレパラートの作り方と染色液の選び方【授業図鑑】
顕微鏡で細胞をきれいに観察するためには、観察するものをスライドガラスの上に載せただけでは不十分です。
試料を薄く整え、水や染色液を加え、カバーガラスで覆ったものを「プレパラート」と呼びます。
プレパラートの出来具合によって、細胞の見やすさは大きく変わります。
今回は、初心者でも取り組みやすいプレパラートの作り方と、観察対象に応じた染色液の使い分けを紹介します。
プレパラートとは
プレパラートは、スライドガラス・観察する試料・カバーガラスの3つで構成されています。
試料に水などを加えて観察する方法は「水封プレパラート」または「ウェットマウント」と呼ばれます。
水封プレパラートは、タマネギの表皮、水草、花粉、池の水などを観察するときに適しています。
短時間で簡単に作れますが、時間がたつと水分が蒸発するため、基本的には作ったその日のうちに観察します。
プレパラートの作成で用意するもの
- スライドガラス
- カバーガラス
- スポイト
- 水
- ピンセット
- 柄付き針またはつまようじ
- ろ紙、キッチンペーパー
- 観察する試料
- 必要に応じた染色液
- 保護メガネ
- 使い捨て手袋
ガラスの表面に指紋や汚れがあると観察しにくくなります。
使用前に、レンズクリーニングペーパーなどでスライドガラスをきれいにしておきましょう。
基本的なプレパラートの作り方
1.試料を薄くする
顕微鏡観察では、光が試料を通り抜ける必要があります。そのため、試料はできるだけ薄くします。
タマネギの場合は、内側にある薄い表皮をピンセットではがします。
葉や茎を観察するときは、できるだけ薄く切った切片を使用します。
試料が厚いと細胞が何層にも重なり、ピントを合わせにくくなります。
2.試料をスライドガラスに載せる
清潔なスライドガラスの中央に、観察する試料を載せます。
ピンセットや柄付き針を使い、試料が折れたり重なったりしないように平らに広げます。
タマネギの表皮などは特に折れやすいため、端まで広がっているか確認しましょう。
3.試料の上から水を1滴落とす
スポイトを使い、試料の上から水を1滴落とします。水が試料全体に広がるようにしてください。
水が多すぎるとカバーガラスが動きやすくなり、試料が流れてしまいます。
少なすぎると観察中に乾燥するため、カバーガラスの下に薄く広がる程度を目安にします。
最初から染色して観察する場合は、水の代わりに、目的に合った染色液を1滴落とします。
4.カバーガラスを斜めからかける
カバーガラスの一辺を水滴の端に触れさせ、約45度に傾けます。
そのまま、空気を押し出すようにゆっくり倒します。
カバーガラスを真上から落とすと、内部に気泡が入りやすくなります。
斜めから静かに倒すことが、きれいなプレパラートを作る重要なポイントです。
5.余分な液体を吸い取る
カバーガラスの外側にはみ出した水は、ろ紙やキッチンペーパーの端を当てて吸い取ります。
吸い取りすぎるとカバーガラスの下が乾燥するため、試料の周囲に液体が残る程度に調整してください。
6.低倍率から観察する
完成したプレパラートを顕微鏡のステージに載せ、最初は最も低い倍率の対物レンズで観察します。
低倍率で試料を見つけ、観察したい部分を視野の中央に移動してから倍率を上げます。
高倍率にした後は、基本的に微動ねじを使ってピントを合わせます。

染色液を後から加える方法
最初は水だけで観察し、その後に染色液を加えて、染色前後の違いを比べることもできます。
カバーガラスの一方の端に染色液を1滴置き、反対側の端にろ紙を当てます。
ろ紙が水を吸い取ると、毛細管現象によって染色液がカバーガラスの下へ引き込まれます。
最初から染色する場合は、スライドガラスに試料を載せて平らに広げた後、水の代わりに染色液を1滴落とし、カバーガラスをかけます。
染色液を多く加えると試料全体が濃く染まり、細部を見分けにくくなることがあります。
まずは1滴から始め、染まり方を確認しましょう。
染色液の使い分け
水または食塩水
試料本来の色や動きを観察したい場合は、まず染色せずに観察します。
例えば、オオカナダモなどの水草では、緑色の葉緑体や原形質流動を観察できることがあります。
池の水に含まれる微生物の動きを見る場合も、通常は染色しません。
口腔上皮細胞には、細胞への浸透圧の影響を抑えるため、生理食塩水を使う方法もあります。
染色液を加えると細胞の状態や自然な色、動きが変わる場合があります。
「生きた状態を見たいのか」「構造をはっきり見たいのか」を先に決めることが大切です。
ヨウ素液
ヨウ素液は、タマネギの表皮など、植物細胞を観察するときによく使われます。
薄いタマネギ表皮に希釈したヨウ素液を加える方法は、植物細胞の基本的な観察法として紹介されています。
また、ヨウ素はデンプンと反応して青紫色から青黒色になります。
そのため、ジャガイモ、米、バナナなどに含まれるデンプン粒の観察にも適しています。
ただし、タマネギの表皮細胞そのものがすべて青黒くなるわけではありません。
青黒くなるのは、主としてデンプンが存在する部分です。
メチレンブルー液
メチレンブルーは、口の内側から採取した口腔上皮細胞など、動物細胞の観察によく使われます。
核が青く染まり、透明な細胞の中で核の位置を確認しやすくなります。
ヨウ素系の染色液は植物組織、メチレンブルーは動物細胞の核を見やすくする用途に適することが、大学の顕微鏡実習資料でも説明されています。
染色液が濃すぎたり、染色時間が長すぎたりすると、細胞全体が濃い青色になり、かえって細部を見分けにくくなります。
最初は少量を使用し、必要に応じて追加しましょう。
酢酸カーミン液・酢酸オルセイン液
酢酸カーミン液と酢酸オルセイン液は、核や染色体を染めるために使われます。
タマネギやネギの根の先端には、活発に細胞分裂している部分があります。
この部分を染色し、試料を押しつぶして薄く広げる「押しつぶし法」を使うと、細胞分裂の各段階や染色体を観察できます。
ただし、根端の染色体観察では、試料の固定、加熱、塩酸処理などを行う方法もあります。
酸を含む試薬を扱うため、学校や実験施設では指導者の管理下で実施してください。

染色液を選ぶ目安
迷ったときは、「何を見たいのか」から染色液を選びます。
- 生き物の動きや自然な色を見たい
→ 水または食塩水 - ジャガイモなどのデンプンを確認したい
→ ヨウ素液 - 口腔上皮細胞の核を見たい
→ メチレンブルー液 - 細胞分裂や核・染色体を見たい
→ 酢酸カーミン液または酢酸オルセイン液
最初に無染色のプレパラートを観察し、その後で染色液を流し込むと、染色前後の違いがよく分かります。
きれいに観察できないときの確認ポイント
気泡が多い
カバーガラスを真上から置いている可能性があります。
カバーガラスの一辺を液体に触れさせ、斜めからゆっくり倒してください。
細胞が重なっている
試料が厚すぎるか、折れています。
より薄い部分を選び、スライドガラス上で平らに広げます。
全体が暗い
染色液が濃すぎる可能性があります。
カバーガラスの端から水を加え、反対側をろ紙で吸って余分な染色液を洗い流します。顕微鏡の照明や絞りも調整しましょう。
何も見つからない
最初から高倍率で探さず、低倍率に戻します。
カバーガラスの端や試料の色がついている部分を目印にして位置を確認します。
観察中に乾燥する
カバーガラスの端から水を少量追加します。
水を入れすぎると試料が流れるため、1滴ずつ加えてください。
安全に観察するために
- 染色液は教材用・顕微鏡観察用として販売されている製品を使用する
- 染色液の容器に記載された注意事項に従う
- 保護メガネと手袋を着用する
- 染色液を皮膚や衣服につけない
- 複数の染色液を不用意に混ぜない
- 試薬を口に入れたり、においを直接かいだりしない
- 欠けたスライドガラスやカバーガラスは使わない
- 使用後の試薬やガラスは、施設や製品の指示に従って処理する
口腔上皮細胞を採取する場合は、自分の試料だけを扱い、採取器具を他の人と共用しないでください。
使用後の器具も再利用せず、指導者の指示に従って処分します。
まとめ
きれいなプレパラートを作るポイントは、「薄く、平らに、気泡を入れずに」です。
さらに、観察の目的に合った染色液を選ぶことで、透明な細胞の構造をはっきり確認できるようになります。
まずは水だけで試料本来の姿を観察し、次に染色液を加えて変化を比べてみてください。
同じ試料でも、染色の有無や染色液の種類によって見え方が大きく変わります。
プレパラート作りは、単なる観察の準備ではありません。
何を見たいのかを考え、試料の厚さや染色方法を工夫することも、顕微鏡観察の大切な一部です。
理科の授業づくりでお困りではありませんか?
顕微鏡を使った観察では、器具の操作方法を伝えるだけでなく、生徒がつまずきやすいポイントを予測し、説明の順序や時間配分、安全面まで考えて授業を組み立てる必要があります。
「観察の手順を、どのように説明すれば伝わるだろう」
「生徒が主体的に取り組める授業にしたい」
「専門外の単元なので、教材研究の進め方に不安がある」
このようなお悩みがありましたら、理科教育力向上ラボの**理科授業力向上コンサルティング**をご活用ください。
小学校・中学校・高校・サポート校の先生を対象に、授業づくりの個別相談、教材研究支援、模擬授業コンサルティングなどをご用意しています。理科を専門としていない先生や、専門外の分野を担当している先生にも、現在のお悩みや準備状況に合わせてサポートします。
授業を一方的に評価するのではなく、先生と一緒に授業を育てていく伴走型の支援です。どのメニューを選べばよいか分からない場合は、まずは無料面談で授業づくりのお悩みをお聞かせください。
お問い合わせフォームの「ご用件」で「コンサルティング」を選択し、「詳細記入」欄に、担当科目や単元、現在お困りのことをご記入ください。
#授業図鑑 #生物基礎 #プレパラート #顕微鏡観察 #細胞 #染色液 #高校 #中学校 #生物 #理科教育 #科学教育 #実験


