【高校生物基礎】光学顕微鏡の使い方【授業図鑑】
「授業図鑑」では、先生方が理科の授業を指導するうえで、押さえておきたいポイントを紹介します。
今回の記事では、中学校理科や高校「生物基礎」の授業で使用する一般的な光学顕微鏡を例に、各部の名称、基本操作、注意事項を解説します。
機種によって部品の形や位置、操作方法が異なるため、実際の授業では、使用する機種の取扱説明書も確認してください。
観察前の予習が、安全で確実な操作につながる
どのような観察・実験でも、事前に操作の流れを確認しておくと、各操作の目的や意味を理解しやすくなります。
顕微鏡を使った観察でも同様です。
顕微鏡は、取り扱いに注意が必要な精密機器です。
初めて扱う生徒にとっては、操作の手順が多く、複雑に感じられることもあります。
また、観察対象が見つからない、ピントが合わない、視野が暗いといったトラブルも起こりがちです。
事前に操作方法を学んでおけば、観察中のトラブルを予防し、問題が起きたときにも原因を考えながら対処しやすくなります。
顕微鏡観察を行う前に、教科書やオンライン教材などを使って、生徒が操作の流れを予習できるようにしておくことが大切です。
光学顕微鏡のしくみ
光学顕微鏡は、光源から出た光を標本に通し、対物レンズと接眼レンズで像を拡大して観察する装置です。
総合倍率は、次の式で求めます。
総合倍率 = 接眼レンズの倍率 × 対物レンズの倍率
たとえば、接眼レンズが10倍、対物レンズが4倍なら総合倍率は40倍です。
倍率を高くすると視野は狭く暗くなり、ピントの合う範囲も浅くなります。
「倍率が高いほどよい」のではなく、目的に合う倍率を選ぶことが大切です。
顕微鏡の各部の名称と役割

| 名称 | 主な役割・指導時のポイント |
| 接眼レンズ | のぞいて像を観察するレンズ。短いほど倍率が大きい。外したまま鏡筒内を放置しない。 |
| 鏡筒 | 接眼レンズと対物レンズの間を一定の位置関係に保つ。 |
| レボルバー | 回して対物レンズを切り替える。「カチッ」と止まる位置まで回す。 対物レンズの倍率を変えるときには、レボルバーを指に触れて回す。 |
| 対物レンズ | 標本に近い側のレンズ。通常は低倍率・中倍率・高倍率を使い分ける。 |
| ステージ | プレパラートを置く台。中央の穴に観察部分を合わせる。 |
| クリップ | プレパラートを固定する。機種によってはメカニカルステージを備える。 |
| しぼり | 標本を通る光の量を調節し、像の明るさやコントラストを整える。 |
| コンデンサー | 標本に光を集める。 |
| 粗動ねじ(調節ねじ) | ステージまたは鏡筒を大きく動かし、おおよそのピントを合わせる。主に低倍率で使う。 |
| 微動ねじ | 少しずつ動かしてピントを正確に合わせる。高倍率では微動ねじを使う。 |
| アーム | 鏡筒やステージを支える。 |
| 反射鏡 | 外部からの光を反射し、標本へ導く。直射日光は絶対に入れない。なお、上の図には掲載していない。 |
| 光源 | 標本を下から照らす。 |
| 鏡台 | 顕微鏡全体を安定させる土台。 |
顕微鏡の操作手順
① 安定した場所に置く
顕微鏡は、片手でアームを持ち、もう一方の手で鏡台を支えて運びます。
生徒が顕微鏡を運ぶ際、実験台の上を引きずってしまうことがあります。
しかし、引きずると振動や衝撃が加わり、部品の緩みや光軸のずれ、故障の原因になります。
顕微鏡は必ず持ち上げて運ぶように指導します。
机の端を避け、水平で安定した場所に置きます。
内蔵照明を使用する機種では、電源コードが通路にはみ出していないかも確認します。
② 必要に応じて、接眼レンズ→対物レンズの順に取り付ける
レンズを取り外して保管する機種では、先に接眼レンズを取り付け、次に対物レンズを取り付けます。
鏡筒内へのほこりの侵入を抑えるためです。
レンズがあらかじめ装着されている機種では、この操作は必要ありません。
授業前に教員が、レンズが確実に取り付けられていることを確認します。
③ 低倍率の対物レンズにする
レボルバーを回し、最も低倍率の対物レンズを光軸上に入れます。
低倍率は視野が広く、観察対象を見つけやすいためです。
④ プレパラートを載せる
カバーガラスを上にしてステージに置き、クリップで固定します。
観察したい部分をステージ中央の穴に合わせます。
⑤ 横から見て、対物レンズを標本に近づける
接眼レンズをのぞかず、横から対物レンズとプレパラートの間を確認します。
粗動ねじ(調節ねじ)を回し、対物レンズを標本に近づけます。レンズをカバーガラスに接触させないように注意します。
※機種によって「鏡筒が動くもの」と「ステージが動くもの」があります。
どちらの機種でも、接触を防ぐため、近づける操作は必ず横から確認します。
⑥ 接眼レンズをのぞきながら、対物レンズと標本を離してピントを合わせる
接眼レンズをのぞき、粗動ねじをゆっくり回して、対物レンズと標本が離れる方向に動かします。
像が見えたら、微動ねじで輪郭が最もはっきりする位置に合わせます。
⑦ 明るさを調節する
光量調節つまみやしぼりを使い、見やすい明るさとコントラストにします。明るすぎると透明な細胞の輪郭が見えにくくなることがあります。
⑧ 観察対象を視野の中央に移す
高倍率へ切り替える前に、見たい部分を視野の中央に置きます。
顕微鏡像は上下左右が反対に見えるため、像を右へ動かしたいときはプレパラートを左へ動かします。
⑨ 必要に応じて倍率を上げる
レボルバーを回して一段高い倍率にし、微動ねじだけでピントを整えます。
再び明るさも調節します。
高倍率では対物レンズとプレパラートの間が狭くなるため、粗動ねじを大きく動かさないようにします。
⑩ 観察後に片付ける
低倍率の対物レンズに戻し、ステージを下げてからプレパラートを外します。
照明を切り、電源コードを抜きます。
レンズに汚れがあるときは、レンズペーパーと指定のクリーナーだけを使います。
最後にコードを無理なくまとめ、カバーを掛けて保管します。
操作時の注意事項
- 直射日光を光源にしない。目を傷めるおそれがあります。
- 対物レンズをプレパラートにぶつけない。レンズ、カバーガラス、標本を傷める原因になります。
- レンズを指やティッシュペーパーで拭かない。傷や皮脂汚れの原因になります。
- レボルバーは対物レンズ本体ではなく、回転部を持って回す。
- 高倍率では粗動ねじを使わず、微動ねじでピントを合わせる。
- 液体がステージや光源部にこぼれたら、すぐに電源を切り、教員が処理する。
- 観察中に見失ったら、無理に高倍率で探さず、低倍率に戻る。
授業で押さえたい「観察の合言葉」
生徒には、次の順番を短い合言葉として示すと、操作を定着させやすくなります。
★低倍率 → 中央に置く → 横から近づける → のぞいて離す → 微動で仕上げる
★最初から高倍率で探さないことと、対物レンズを近づけるときは横から見ること。
この2点を繰り返し確認するだけでも、観察の成功率と器具の安全性は大きく向上します。
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