【生物基礎】消化からはじめる代謝とエネルギーの学習【授業実践備忘録】
今回の授業実践備忘録のテーマは「代謝とエネルギー」。
この単元は物理・化学の内容が入り、苦手意識をもちがちなところ。
この単元においては、食物から得た栄養素からどのようにエネルギーとして生み出されるのかという点から、代謝への関心と理解を深めるようにしました。
対象
高校1年生
クラスによって25〜39人というように人数に幅がある。
生徒観
正直なところ学力はあまり高くはないが、授業に対しては前向きに取り組んでいる。
授業では挙手により積極的に発言したり、活発に話し合いをしている。
教材
教科書と自作の授業プリント(ワークシートと知識の整理を兼用している)
A.栄養素と消化
中学校の段階で栄養素の消化と吸収について学んでいます。
私の授業実践においては、栄養素が体内に吸収された後の過程として代謝というものを生徒に理解してもらいたいと思い、あえて栄養素と消化の復習を行っています。
発問
1.中学校の理科や家庭科で習っているが、三大栄養素には何があったか?(炭水化物・タンパク質・脂質)
2.それぞれの栄養素は消化されたら何という物質になるか?
(炭水化物→ブドウ糖 タンパク質→アミノ酸 脂質→脂肪酸とモノグリセリド)
生徒の反応
1.三大栄養素については、炭水化物・タンパク質・脂質以外にもビタミン・ミネラルといった意見が出た。
(ちなみに、三大栄養素・ビタミン・ミネラルを合わせて五大栄養素という)
2.消化された後の物質について、脂肪酸・モノグリセリドという答えがすぐに出たクラスとそうでないクラスに分かれた。
板書で整理
B.代謝とエネルギー
同化と異化
代謝というのは生体内で起こる化学反応のことで、エネルギーを取り込んで簡単な物質から複雑な物質を合成する「同化」と、複雑な物質を簡単な物質に分解しながらエネルギーを生み出す「異化」があることを説明・板書した。
代謝ではさまざまな形でエネルギーがやりとりされるが、ウサギが草を食べることを例に、同化と異化の具体例を板書で図示した。
(生徒のプリントでは同化・異化に当てはまるところの穴埋めと、エネルギーの出入りの図示だけを行うようにした)
この後、独立栄養生物と従属栄養生物、有機物と無機物の定義について説明・板書した。
エネルギーの種類
エネルギーについては中学校3年の理科や技術で学んでいる。
その種類として何があるか、生徒に答えてもらい確認した。
(時間の都合上、板書は割愛した)
- 運動エネルギー:運動する物体がもつエネルギー
- 位置エネルギー:高いところにある物体や変形した物体がもつエネルギー
- 熱エネルギー:熱がもつエネルギー
- 電気エネルギー:電気がもつエネルギー
- 化学エネルギー:物質の中に蓄えられていて、化学変化でやりとりされるエネルギー
- 核エネルギー:原子核が分裂した放出するエネルギー
- 光エネルギー:光がもつエネルギー
※運動エネルギーと位置エネルギーをまとめて力学的エネルギーという。
C.生体のエネルギー通貨・ATP
エネルギーは生物の活動の源であるが、決まった形がない。
効率よくエネルギーを使えるようにするために、ATP(アデノシン三リン酸)という物質の中に化学エネルギーとして蓄えておく。
ATPはいわば充電された電池のようなものという例えで説明した。
その上で、ATPとADPの構造について説明・板書をした。
授業実践の振り返り・反省
消化・吸収の復習は効果的
高校の生物では消化・吸収は直接扱わないが、栄養素が細胞に取り込まれた後は代謝によってエネルギーのやりとりを行ったり、自分の体の合成に使われます。
また、消化・吸収は後に学ぶ食物連鎖や炭素・窒素の循環にも大きく関係します。
特に中学校時代に化学分野が苦手な生徒にとっては、代謝はとっつきにくい単元と思われているようです。
しかし、栄養素の消化・吸収の復習を行ったことで、代謝がわかりやすいものに感じる様子がうかがえました。
なぜ「高エネルギー」リン酸結合なのか?
ATP・ADPの中で、リン酸どうしが結合するときに高いエネルギーを蓄えていると教科書でも述べられています。
これは、そもそもリン酸(正式にはリン酸基)がマイナスの電気を帯びていて、それらが無理矢理くっついた形になっているので、高エネルギーとなっています。
このATPとADPの板書を生物学の専門家の知人にご覧頂いたところ、本来はリン酸のところにマイナス(ー)の記号をつけるべきというご指摘も頂戴致しました。
貴重なご指摘ありがとうございます。
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文責:滝沢