【生物基礎】細胞内共生説から細胞の構造と機能を理解する【授業実践備忘録】
今回の授業実践備忘録のテーマは「細胞の構造と機能」。
この単元は構造と名称を丸暗記しがちなところですが、細胞内共生説に基づき、ストーリーを立てながら説明することで構造と機能が理解できることに繋がります。
対象
高校1年生
クラスによって25〜39人というように人数に幅がある。
生徒観
正直なところ学力はあまり高くはないが、授業に対しては前向きに取り組んでいる。
授業では挙手により積極的に発言したり、活発に話し合いをしている。
教材
教科書と自作の授業プリント(ワークシートと知識の整理を兼用している)
A.細胞の構造
ワーク
細胞については中学校2・3年の理科の授業で既に習っている。
動物細胞には細胞膜・核・細胞質、植物細胞ではそれらに加え葉緑体・液胞があることまで中学校で学んでいる。
それらのことを確認するために、白紙の状態から動物細胞と植物細胞の絵を生徒に描いてもらった。
留意点
細胞の絵といっても、顕微鏡で見えるような多数の細胞を描く生徒も出てくることがある。
今回の授業では、1個の細胞において構造と機能を理解してもらいたいので、1個の細胞を大きく描くように予め生徒に指示しておいた。
実際の生徒の回答
細胞の絵を描ける生徒とそうでない生徒にはっきりと分かれた。
ただ、白紙から描けなくても、周りの生徒と話し合う中で思い出し、描けるようになったというケースが見られた。
高校受験対策で理科の復習をしてきたかどうかによるものかもしれない。
細胞の構造(ワークの答え合わせを含めて)
物事を本当に理解する=図解できることでもあることを生徒に伝え、「秘伝の奥義」と称し、細胞内共生説に基づいて説明しながら、動物細胞と植物細胞の図をそれぞれ板書した。
ただし、図を描くときの順番とチョークの色は工夫をした。
動物細胞
① 進化の歴史の中で最初にできた細胞は外を細胞膜で囲まれ、中は細胞質基質(サイトゾル)で満たされている。また、今でいうところの染色体も膜に包まれていない状態で存在していた。
② 細胞膜が内側に凹み、染色体を包むようになり、核膜となった。この染色体が核膜で包まれたものをまとめて核とよぶ。
★核膜には小さな孔(核膜孔)があることを強調するために、花びらがつながったような形で細胞膜を示した。
③ 酸素を取り込んでエネルギーを生み出す好気性細菌が細胞膜を突っ切り、細胞内に入り込んだ。この好気性細菌の周りには細胞膜がはりつき、二重の膜となり、ミトコンドリアとなった。
★ミトコンドリアの外側の膜は細胞膜由来であることを強調するために、細胞膜と同じ色で板書した。
植物細胞
①〜③は動物細胞と同じ過程をたどっている。
④ 酸素を取り込んで光合成を行うシアノバクテリアが登場し、細胞膜を突っ切り細胞内に入り込んだ。このシアノバクテリアの周りには細胞膜がはりつき、二重の膜となり、葉緑体となった。
★葉緑体の外側の膜も細胞膜由来であることを強調するために、細胞膜と同じ色で板書した。
⑤ 花の色にはいろいろあるが、その色素を蓄えるための液胞が細胞内で発達した。
⑥ そして細胞の形を保護するために、植物細胞の外側は細胞壁で囲まれた。
バクテリアの細胞
バクテリアの細胞の構造は中学校の段階では未習で、なおかつ動物・植物とも違う構造ということで、私の方で説明しながら図示した。
① 進化の歴史の中で最初にできた細胞は外を細胞膜で囲まれ、中は細胞質基質(サイトゾル)で満たされている。また、今でいうところの染色体(DNA)も膜に包まれていない状態で存在していた。
★動物・植物の染色体はDNAとタンパク質でできているが、バクテリアの染色体はDNAのみでできている。
② バクテリアの染色体(DNA)は核膜では包まれず、そのままの状態で細胞壁に囲まれた。
★植物の細胞壁はセルロースという物質でできているが、バクテリアの細胞壁はペプチドグリカンという物質でできている。
③ バクテリアは自身が動くための線毛と鞭毛をもち合わせている。
★すべてのバクテリアがもっているわけではない。
真核細胞と原核細胞
生物によっては核が見られる細胞と見られない細胞があり、前者を真核細胞、後者を原核細胞と呼ぶことを説明した。
B.細胞小器官の機能
細胞を構成するパーツを細胞小器官と呼ぶ。
原核細胞・動物細胞・植物細胞に分けて、これまで出てきた細胞小器官の有無を表にまとめ、比較した。
なお、それぞれの細胞小器官の機能については、以下のように授業プリントに示している。
細胞内共生に合わせて図示する最中に説明はしているが、改めて口頭で説明し、確認した。
- 核:細胞の形や働きを支配する。
- 細胞膜:細胞内外での物質のやり取りを調節する。
- 細胞質基質:細胞内での化学反応の場。
- ミトコンドリア:酸素を使って呼吸を行う(エネルギーを生み出す)
- 葉緑体:光合成の場
- 液胞:色素や老廃物を蓄える。液胞膜という一重の膜で囲まれている。
- 細胞壁:細胞の形を維持する。
これらの中でも核と細胞壁を除き、まとめて「細胞質」と呼ぶことにも触れた。
進化の足跡
ミトコンドリア・葉緑体がそれぞれ二重の膜と独自のDNAをもつことも授業の最後に説明した。
授業実践の振り返り・反省
つなげてみると面白い
「中学のときは細胞のところは丸暗記して覚えてたけど、つなげてみると面白いし、わかりやすい」
細胞内共生説に基づいて説明・図示をしたところ、生徒からこのような感想をいただきました。
こう言ってくれた生徒の周りにいた人たちも、どうやら同じことを思っていた様子。
細胞小器官の構造と機能にはつながりがあることを理解してほしいと思っていたので、我ながら手応えのあった授業内容だったと自惚れています(笑)
後日、生徒がテスト勉強をしている様子を見ていたら、私が授業で説明した通りに細胞を図示して、細胞小器官の有無と役割を整理している姿がうかがえました。
動物細胞に液胞?
私自身も授業をしていて違和感があったのですが、某学会のHPによると、電子顕微鏡で観察すると動物細胞でも植物細胞でも液胞が確認できるようです。
代表的なものに「ファゴソーム(貪食液胞)」というものがあります。
ということは、教科書で示されている細胞小器官の有無の表は、光学顕微鏡で確認できるかどうかが基準になっているということなのでしょうか?
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文責:滝沢