【生物基礎】酵素はタンパク質からできた生体触媒【授業実践備忘録】
対象
高校1年生
クラスによって25〜39人というように人数に幅がある。
生徒観
正直なところ学力はあまり高くはないが、授業に対しては前向きに取り組んでいる。
授業では挙手により積極的に発言したり、活発に話し合いをしている。
教材
教科書と自作の授業プリント(ワークシートと知識の整理を兼用している)
A.触媒としての酵素
消化酵素からの導入
唐突に「酵素」といわれてもとっつきにくいと思う生徒もいるのではないかと思い、中学校で学んだ消化酵素の復習を行った。
まず、三大栄養素には炭水化物(デンプン)・タンパク質・脂質があり、それぞれが何という物質に消化されるかを発問しながら確認した。
その後、それぞれの消化の過程において使われる消化酵素を生徒に考えてもらい、発言してもらった。
「アミラーゼ」「ペプシン」といった名称が生徒から出てくるが、どの物質の消化で働いているかがつながっていないようだった。
生徒の発言が止まったところで、それぞれの消化酵素の名称の頭文字を私の方で出すと、発言があった。
酵素の働き
消化酵素を含め、酵素の働きを考えることがこの授業の目的であることを示し、次のA〜Eの試験管に過酸化水素水を3mLずつ加え、その後火のついた線香を加える演示実験を行った。
- 試験管A・・・二酸化マンガンが入っている
- 試験管B・・・生の肝臓片が入っている
- 試験管C・・・ゆでた肝臓片が入っている
- 試験管D・・・生の肝臓片+3%塩酸2mLが入っている
- 試験管E・・・生の肝臓片+5%水酸化ナトリウム水溶液2mLが入っている
理論上、試験管AとBから酸素の泡が発生し、線香の火がよく燃えるが、試験管Eでも若干反応が起こった。
この実験の結果をもとに、肝臓にはカタラーゼという酵素が存在し、二酸化マンガンと同様に触媒の働きをすることを説明・板書した。
ちなみに、呼吸によってグルコースからATPを合成する際、過酸化水素が発生するが、体に有害なのでカタラーゼで分解される。
その後、酵素を含む触媒がどのようにして化学反応を速めるのかについて、活性化エネルギーの変化から説明した。
活性化エネルギーとは化学反応に要するエネルギーのことで、この値が低ければ化学反応は速く進む。
B.酵素特有の性質
先程の試験管A〜Eで起こった反応をもとに、酵素特有の性質として、基質特異性・最適温度・最適pHがあることを説明・板書した。
なお、生物基礎においては現在、最適温度と最適pHは発展内容扱いとされているが、身近な内容であったので私の授業では扱った。
基質特異性
デンプンにはアミラーゼ、タンパク質にはペプシンがそれぞれ作用することを例に、酵素の種類によって作用する物質(=基質という)が異なるのが基質特異性であることを説明・板書した。
その際、生物基礎においては発展内容になるが、基質と酵素が結合する「活性部位」および「酵素―基質複合体」についても説明した。
反応後、酵素は元の状態を保っていて、新たに基質を加えるとくり返し作用することについても触れた。
最適温度
ゆでた肝臓は高温の状態でなったので、肝臓に含まれていたカタラーゼが働かず、酸素が発生しなかったことをもとに、酵素はよく働く温度(=最適温度)があることを説明・板書した。
最適pH
塩酸あるいは水酸化ナトリウム水溶液に肝臓を浸すと、カタラーゼが働かず、酸素がそんなに発生しなかったことをもとに、酵素には種類によって酸性・中性・アルカリ性のどこでよく働くかが違うことを説明・板書した。
また、唾液が中性、胃液が酸性であることを例にして、消化酵素も同様であることについても触れた。
タンパク質の変性と酵素の失活
酵素がこうした特有の性質をもつのは、そもそも酵素がタンパク質であり、熱・酸・アルカリを加えることで構造が変化するからである。
これをタンパク質の変性といい、酵素として機能しなくなることを失活ということを説明・板書した。
(余談になるが、熱による変性が生徒にとってわかりやすくイメージできるように、以前流行ったアニメ「ぐ●たま」の絵を板書し、生徒の興味と笑いを誘った)
授業実践の振り返り・反省
日常での酵素の利用
酵素は洗剤・医薬品・食品など、身近なところで活用されています。
実際の授業では時間の都合上、割愛せざるを得ませんでしたが、生物の働きと日常との関わりを学ぶことは重要だと思います。
消化と関連づけた説明は効果的
中学校の理科で学ぶ食物の消化について、高校では直接触れてはいませんが、酵素のところでも消化酵素と関連があります。
授業の冒頭、酵素という言葉が出ても生徒は「?」という様子でいましたが、消化酵素という言葉が出ると「思い出した!」といった反応がありました。
補足
消化酵素の板書についてご指摘を頂きましたので訂正させていただきます。
タンパク質からアミノ酸に分解されるまでには、小腸にあるペプチダーゼという酵素も必要でしたが、抜けていました。
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文責:滝沢