【化学基礎】原子量・分子量・式量は粒子の質量比【授業実践備忘録】
2024年7月より【授業実践備忘録】というカテゴリーをつくり、私が勤務している高校での生物基礎の授業実践について綴ってきました。
ただ、私は化学の授業も担当していますが、「化学の授業実践は記事にしないのか?」といったご指摘をいただきました。
そこで、現在私が勤務している学校のペースに合わせ、化学基礎の内容として原子量・分子量・式量をテーマにした授業実践について皆様にご紹介致します。
対象
高校1・2年生
生徒観
学力は高くない生徒が多く、授業に対する積極性には個人差があります。
また、計算が苦手な生徒も少なくありません。
教材
教科書と自作の授業プリント(ワークシートと知識の整理を兼用)
A.相対質量
「原子の質量はどのように考えられてきたのか?」という問いかけを行い、実際の原子の質量を小数で示しました。
しかし、実際の原子の質量は非常に小さく、10⁻²⁴〜10⁻²³gという値です(板書の画像参照)。
これでは扱いにくいため、「質量数12の炭素原子の質量を12」として、他の原子との質量比を相対質量と呼び、原子の質量を相対的に捉える方法を説明しました。
B.原子量
1つの元素に対して1種類の数値を割り当て、質量比をシンプルに理解できるようにするため、同位体の相対質量と存在比から得られる平均値として「原子量」が定義されたことを説明しました。
同位体という言葉は年度初めの授業で扱いましたが、多くの生徒が忘れている可能性があったため、定義の復習も行いました。
同位体の相対質量と存在比を用いた平均値の概念が抽象的であるため、生徒にとって理解しやすいよう、人間の平均体重の計算を例に挙げました。
個々の体重を相対質量、人数を存在比に対応させて説明しました。
その後、ホウ素の原子量を計算する問題演習を行いました。
C.分子量と式量
次に、原子が結合してできる分子や、組成式で表される物質、イオンの質量比についても、原子量の和で表されることを説明しました。
授業実践の振り返り・反省
分子量・式量の計算については、長年授業で繰り返してきましたが、近年、テストで誤答が目立つようになりました。
特に、「原子量を掛け算して分子量や式量を計算する」という誤りがよく見られます。
陰イオンの式量では、イオン式の右上にある負の値を掛け算し、式量にマイナスがついた答えも散見されました。
これは、数学で複数の文字が並ぶと掛け算するというルールが、化学式にも適用されてしまった結果だと考えられます。
このような背景から、近年の授業では、分子量・式量の計算においては足し算が基本であることを強調しています。
原子量・分子量・式量は、量的関係を理解する上での基本です。
計算ができることが一つの目的になりがちですが、歴史的に振り返ると、これらの概念は、原子の正体を突き止めるための一つの考え方であることを生徒に理解してもらう必要があると感じています。
ちなみに、原子量の基準は次のように変遷しています。
1803年・・・ドルトンが最も軽い元素である水素の原子量を1とした原子量を発表
※この原子量表には誤りが多かった。
1818年頃・・・ベルセリウスが多くの化合物をつくるということで、酸素の原子量を100とした原子量表を発表
※原子量がかなり大きな数値になってしまい、計算が面倒になった。
1850年頃・・・スタスが計算しやすいように、酸素の原子量を16と定めた。
1905年・・・国際度量衡委員会が酸素の原子量を16と定めることを認めた。
1912年・・・同位体の発見
※これ以降化学者の中では3種類の酸素の同位体の平均を16とする原子量、物理学者の中では質量数16の酸素の原子量を16と定めるという2つの基準ができ、一時混乱した。
1961年・・・IUPAC(国際純正・応用化学連合)が質量数12の炭素の原子量を12と定めることを認めた。
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文責:滝沢