【高校化学基礎】混合物の分離①|固体を取り出す―ろ過・再結晶・昇華法【授業図鑑】

化学では、物質がどのような性質をもつのかを明らかにし、その性質を利用することが重要です。
そのため、複数の物質が混ざった混合物から目的の物質を取り出したり、不純物を取り除いたりする技術が発展してきました。
では、混ざっている固体を取り出すには、どのような性質の違いを利用すればよいのでしょうか。
今回の記事では、混合物の分離法のうち、ろ過・再結晶・昇華法を取り上げ、それぞれの操作を「何の性質の違いを利用しているのか」という視点から考える授業実践例を紹介します。
混合物の分離と精製
混合物を、それを構成する成分ごとに分ける操作を「分離」といいます。
ただし、分離して取り出した物質に、少量の不純物が残っている場合もあります。
その不純物を取り除き、目的物質の純度をさらに高める操作を「精製」といいます。
混合物の分離には、主に次のような方法があります。
- ろ過
- 蒸留
- 分留(分別蒸留)
- 再結晶
- 昇華法
- 抽出
- クロマトグラフィー
これらは操作の名称こそ異なりますが、いずれも物質どうしの性質の違いを利用しています。
分離法を学ぶときには、操作手順だけでなく、「どの性質の違いを利用しているのか」を考えることが大切です。
ろ過―液体と、溶けていない固体を分ける
ろ過とは、ろ紙などの「ろ材」を使い、液体と、その液体に溶けていない固体を分ける操作です。
ろ材の細かな隙間を通過できるかどうか、つまり粒子の大きさの違いを利用しています。
砂と水の混合物を例に考えてみましょう。
水はろ紙を通過しますが、水に溶けていない砂粒はろ紙を通過できず、ろ紙の上に残ります。
ろ紙上に残った固体を「残留物」、ろ紙を通過して受ける容器にたまった液体を「ろ液」といいます。
ここで注意したいのは、ろ過では水に溶けている物質を取り除けないことです。
例えば食塩水をろ過しても、ナトリウムイオンと塩化物イオンは水とともにろ紙を通過します。

ろ過操作のポイント
混合物をろ過するときには、次の点を確認します。
- 混合物はガラス棒を伝わせて、静かに注ぐ
- ガラス棒の先端は、ろ紙が重なっている側に触れさせる
- 注いだ液面が、ろ紙の上端を越えないようにする
- 漏斗の脚の先端を、受ける容器の内壁に触れさせる
これらは単なる作法ではありません。
液が飛び散ることや、ろ紙が破れること、ろ過されていない液がろ紙の外側へ流れ込むことを防ぎ、ろ液を安定して流すための工夫です。

暮らしや生物の中にある「ろ過」
豆腐づくりでは、加熱した呉を布でこし、液体である豆乳と、固体を多く含むおからに分けます。
布をろ材として、液体と固体を分ける操作と捉えることができます。

腎臓でも、糸球体からボーマンのうへ血液中の水や小さな物質が移動する過程を「糸球体ろ過」と呼びます。
血球や大部分のタンパク質は血液中に残り、水、無機塩類、グルコース、尿素などを含む原尿がつくられます。
ただし、腎臓のろ過は、圧力と生体膜の選択性が関係する生理現象です。
実験室で行う重力ろ過とまったく同じ仕組みではないことも、併せて確認しておきます。

再結晶
再結晶とは、温度による溶解度の変化を利用して、溶液から目的物質を結晶として取り出し、純度を高める操作です。
一般には、不純物を含む固体を少量の高温の溶媒に溶かし、その溶液を冷却します。
温度が下がると目的物質の溶解度が小さくなり、溶けきれなくなった分が結晶として析出します。
一方、不純物の多くは溶液中に残ります。結晶を取り除いた後に残る液体を「母液」といいます。

硝酸カリウムは、温度が高くなるほど水への溶解度が大きく増加するため、再結晶に適した物質です。
温かい硝酸カリウム水溶液を冷却すると、溶けきれなくなった硝酸カリウムが結晶として現れます。

再結晶では、目的物質をすべて取り出せるわけではありません。冷却後も一部は母液に溶けたまま残ります。そのため、「できるだけ多く回収すること」と「純度の高い結晶を得ること」の両方を考える必要があります。
昇華法―固体から気体への変化を利用する
昇華法とは、固体の混合物に含まれる成分の昇華しやすさの違いを利用する分離法です。
混合物を加熱すると、昇華しやすい成分が固体から気体になります。
その気体を冷たい部分に触れさせると、再び固体となって付着します。昇華しにくい成分は、加熱した容器に残ります。

ヨウ素やナフタレンなどは、昇華法によって昇華しにくい不純物から分けることができます。
例えば、ヨウ素を含む混合物を穏やかに加熱すると、紫色のヨウ素蒸気が生じ、冷却した面にヨウ素の結晶が付着します。

ヨウ素蒸気は有害で、目や呼吸器を刺激します。
実験を行う場合は、密閉性に配慮した装置やドラフト内での操作など、適切な換気と安全管理が必要です。生徒が蒸気を直接吸い込まないようにします。
3つの分離法を比べる
| 分離法 | 利用する性質 | 分けるものの例 | 取り出した後 |
| ろ過 | 粒子の大きさ、液体に溶けているか | 砂と水 | 残留物とろ液 |
| 再結晶 | 温度による溶解度の変化 | 硝酸カリウム水溶液 | 結晶と母液 |
| 昇華法 | 昇華しやすさ | ヨウ素と昇華しにくい不純物 | 冷却面の結晶と残留物 |
授業では、「この混合物にはどの分離法を使うか」だけでなく、「なぜその方法を選べるのか」を説明させることが重要です。
分離法の名称と、利用する物質の性質を結び付けることで、未知の混合物についても分離方法を考えられるようになります。
探究への手がかり
ろ過・再結晶・昇華法は、手順を確認する実験から、条件を比較する探究活動へ発展させることができます。
分離の手順を生徒自身が設計する
例えば、食塩と砂の混合物を提示し、「できるだけ純度の高い状態で、それぞれを取り出すには、どのような順序で操作すればよいか」と問いかけます。
水への溶けやすさの違いを利用して食塩だけを水に溶かし、ろ過によって砂を分け、その後、ろ液から食塩を結晶として取り出すという操作を、生徒自身に設計させることができます。
暮らしや社会の分離技術へ広げる
コーヒーフィルター、浄水、豆腐づくり、塩づくり、医薬品の精製、資源のリサイクルなどを調べ、「どの性質の違いを利用しているのか」という視点で分類する探究も考えられます。
身近な操作を化学の言葉で説明することで、教室で学んだ分離法を社会や暮らしと結び付けられます。
理科授業づくり相談室のご案内
「実験を取り入れたいが、準備や片付けに使える時間が限られている」
「生徒によって結果がばらつき、考察までつなげられない」
「手順をなぞるだけの実験から、探究的な授業へどう発展させればよいか分からない」
「安全面に配慮しながら、どこまで生徒に任せればよいか迷う」
混合物の分離は、身近な題材と結び付けやすい一方で、操作の説明だけで授業が終わりやすい単元でもあります。
分離法の暗記ではなく、「どの性質の違いを利用したのか」「得られた物質の純度をどう確かめるのか」と問い直すことで、証拠に基づいて考える授業へ変えられます。
SFB科学教育デザインラボの「理科授業づくり相談室」では、単元構成、導入の問い、実験・探究活動の設計、安全に配慮した教材や条件の選定、板書・ワークシートの改善など、先生の授業づくりを一緒に考えます。
完成した授業案を一方的にお渡しするのではなく、学校の設備、授業時数、生徒の実態、先生が大切にしたい学びを伺いながら、実施できる形に整えていきます。
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