【高校生物基礎】肝臓の働き【授業図鑑】

肝臓の働きは、血糖調節、尿素の合成、胆汁の生成、解毒など多岐にわたります。
そのため、機能を一つずつ説明するだけでは、生徒にとって「覚えることの多い臓器」になりがちです。
そこで今回の授業では、消化管から入ってきた物質を、肝臓がどのように処理し、体内環境を保っているのかという一本の流れで整理しました。
中学校で学んだ消化・吸収から始め、血管、肝臓内の反応、恒常性へつなぐ授業実践をご紹介します。
消化・吸収の復習を導入にする
まず、中学校理科で学んだ内容を短く振り返ります。
- 炭水化物 → おもにグルコース
- タンパク質 → アミノ酸
- 脂質 → 脂肪酸とモノグリセリド
グルコースやアミノ酸は小腸の毛細血管に入り、肝門脈を通って、まず肝臓へ運ばれます。
一方、脂質の多くはリンパ管を経て血液循環へ入ります。

導入では、「小腸で吸収された栄養分は、その後どこへ行くのだろう」と問いかけます。
既習事項の先に肝臓を位置付けることで、恒常性の単元でも唐突さを感じにくくなります。
肝臓の構造は「出入り口」から見る
肝臓は人体で最大の内臓です。
授業では、細部の名称を先に覚えさせるのではなく、次の出入り口を図上で確認します。
- 肝動脈:心臓から酸素を多く含む血液が入る
- 肝門脈:消化管から栄養分を多く含む血液が入る
- 肝静脈:肝臓を通った血液が出る
- 胆管:肝臓でつくられた胆汁が流れ出る

物質の流れを矢印で整理する
肝臓を中心に見ると、血液と胆汁の経路は次のように整理できます。
- 心臓 → 肝動脈 → 肝臓 → 肝静脈 → 心臓
- 消化管 → 肝門脈 → 肝臓 → 肝静脈 → 心臓
- 肝臓 → 胆管 → 胆のう・十二指腸

ここでは、血管名の暗記よりも、「どこから来て、どこへ向かうか」を矢印で説明させます。
肝門脈は消化管と肝臓を結び、吸収された物質を全身へ回す前に肝臓へ届ける血管だと捉えさせることがポイントです。
肝臓を「体内の化学工場」として捉える
肝臓へ運ばれた物質は、必要に応じて合成・分解・変換されます。
生物基礎の授業では、次の五つに整理すると全体像をつかみやすくなります。
① 血糖(血液中のグルコース)濃度の調節
血糖濃度が高いときは、グルコースからグリコーゲンを合成して肝臓に蓄えます。
血糖濃度が低いときは、グリコーゲンを分解し、グルコースを血液中へ放出します。
② 血しょうタンパク質の合成
小腸から運ばれたアミノ酸を材料に、アルブミンやフィブリノーゲンなどの血しょうタンパク質を合成します。
タンパク質をそのまま貯蔵するのではなく、必要な物質へつくり替えると捉えます。
③ 尿素の合成
余分なアミノ酸が分解されると、有害なアンモニアが生じます。
肝臓はアンモニアを毒性の低い尿素へ変えます。
尿素は血液で腎臓へ運ばれ、尿として排出されます。
④ 赤血球由来成分の処理と胆汁の生成
古くなった赤血球は、主にひ臓や肝臓のマクロファージによって分解されます。
ヘモグロビンに含まれる鉄は再利用され、ヘムに由来するビリルビンは胆汁中へ排出されます。
胆汁に含まれる胆汁酸は、脂肪を細かな粒にして消化・吸収を助けます。
⑤ 解毒・代謝
肝臓は、アルコールや薬物などを酵素によって別の物質へ変換し、体外へ排出しやすくします。
すべてを単純に「無害化」できるわけではなく、代謝の途中で有害な物質が生じたり、処理能力を超えると肝細胞が傷ついたりする点も補足できます。

これらの代謝では熱も発生します。
5つの働きを別々に暗記するのではなく、「体に入った物質を、必要な形・量に整える」という共通点に戻すと、肝臓と恒常性が結びつきます。
探究への手がかり―食後と空腹時の肝臓を比べよう
特別な実験器具を使わず、15〜20分ほどでできるモデルづくりです。
問い:食後と空腹時では、肝臓内の物質の流れはどのように変わるだろうか。
- 紙に「小腸・肝門脈・肝臓・肝静脈・全身」を配置する。
- 「食後」と「空腹時」の二つの場面について、グルコースとグリコーゲンを矢印で結ぶ。
- 肝臓で起こる反応を「合成」「分解」から選び、理由を一文で説明する。
- 二つの図を比べ、「肝臓がなければ血糖濃度はどう変化するか」を考察する。
最初は教科書を閉じて予想し、その後に資料を使って修正させると、生徒自身の考えが表れます。
発展として、インスリンとグルカゴンの働きを図へ加えれば、内分泌系の学習にも接続できます。
評価は、①物質の向き、②合成・分解の選択、③恒常性との関連、の三点に絞ると短時間でも見取りやすくなります。
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