【高校生物基礎】酸素と二酸化炭素の運搬【授業図鑑】

呼吸によって肺に取り込まれた酸素は、どのようにして全身の細胞へ届くのでしょうか。
また、細胞の呼吸で生じた二酸化炭素は、どのように肺まで運ばれるのでしょうか。
今回の記事では、血液による酸素と二酸化炭素の運搬を、高校生物基礎の授業でどのように扱うかを紹介します。
特に酸素解離曲線は、グラフを読むだけでなく、「一定量の血液が組織へどれだけの酸素を供給できるか」まで考えることが大切です。
酸素の運搬
酸素の多くは、赤血球に含まれる色素タンパク質のヘモグロビン(Hb)と結合して運ばれます。
酸素と結合したヘモグロビンを酸素ヘモグロビン(HbO₂)といい、高校生物基礎では次のように簡略化して表します。
Hb + O₂ ⇄ HbO₂
実際のヘモグロビン1分子には、最大4分子の酸素が結合できます。
肺では酸素と結合しやすく、全身の組織では酸素を手放しやすい性質があるため、酸素を必要な場所へ効率よく届けられます。
酸素ヘモグロビンを多く含む動脈血は鮮紅色に近く、酸素ヘモグロビンの割合が低い静脈血は暗赤色に見えます。

ヘモグロビンと酸素
酸素ヘモグロビンが酸素を手放しやすい条件は、次の3つの項目でまとめられます。
- 酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高い
- 温度が高い
- pHが低い
運動中の筋肉では、酸素が消費される一方、二酸化炭素や熱が多く生じます。
そのため、ヘモグロビンが酸素を手放しやすい条件がそろいます。
体の変化に応じて酸素の結合と解離が変わることが、酸素運搬の重要なポイントです。
酸素解離曲線―どれだけの酸素を供給できるのか
ヘモグロビンが酸素と結合している割合を、周囲の酸素濃度との関係で表したグラフが酸素解離曲線です。
板書では、横軸を酸素濃度の相対値、縦軸を酸素ヘモグロビンの割合としています。
2本の曲線は、二酸化炭素濃度の違いを表します。
同じ酸素濃度で比べると、二酸化炭素濃度が高いほど、ヘモグロビンは酸素を手放しやすくなります。

この板書では、ヘモグロビンの総数を20個として考えています。
- 肺:20個中19個が酸素ヘモグロビン → 19÷20×100=95%
- 組織:20個中7個が酸素ヘモグロビン → 7÷20×100=35%
- 肺から組織へ移動する間に酸素を手放したもの: 19-7=12個分
ここで、割合の「基準」を区別する必要があります。ヘモグロビンの総数20個を基準にすると、酸素を手放した割合は 12÷20×100=60% です。
一方、肺で酸素と結合していた19個を基準にすると、組織で酸素を手放した割合は 12÷19×100≒63%になります。
教科書や問題集では複数の割合が登場します。
「何を100%としているのか」を確認し、まず100個や20個の粒子モデルに置き換えると、酸素の受け渡しを捉えやすくなります。
二酸化炭素の運搬
組織で生じた二酸化炭素の多くは、赤血球内で水と反応し、炭酸を経て炭酸水素イオン(HCO₃⁻)になります。
この反応は、赤血球内の酵素である炭酸脱水酵素によって速やかに進みます。
CO₂ + H₂O ⇄ H₂CO₃ ⇄ H⁺ + HCO₃⁻
組織付近で生じた炭酸水素イオンの多くは赤血球から血しょうへ移り、血液によって肺まで運ばれます。
肺では逆向きの反応が進み、炭酸水素イオンから二酸化炭素が再びつくられ、呼気として体外へ排出されます。

この流れを「バケツリレー」にたとえるなら、赤血球どうしが二酸化炭素を直接受け渡すのではなく、炭酸水素イオンとして血しょう中を運ぶことがリレーに当たります。
二酸化炭素の一部はヘモグロビンと結合し、一部は血しょうに溶けたまま運ばれます。
探究への手がかり
酸素解離曲線から酸素供給量を求めよう
次の条件で、100 mLの血液が組織へ供給できる酸素量を求めてみましょう。
- 血液100 mLに含まれるヘモグロビン:15 g
- ヘモグロビン1 gが最大限に結合できる酸素:1.34 mL
- 肺での酸素ヘモグロビンの割合:95%
- 組織での酸素ヘモグロビンの割合:35%
- 血しょうに溶けている酸素は考えない
問い
- 血液100 mLが最大限に結合できる酸素は何mLか。
- 肺で血液に結合している酸素は何mLか。
- 組織を通過した後も血液に残っている酸素は何mLか。
- 血液100 mLが組織へ供給した酸素は何mLか。
- 1分間に5.0 Lの血液が流れるとすると、1分間に供給できる酸素は何mLか。
計算例
最大結合量は、15×1.34=20.1 mLです。
肺では20.1×0.95≒19.1 mL、組織通過後は20.1×0.35≒7.0 mLの酸素が結合しています。
したがって、血液100 mLが供給する酸素は約12.1 mLです。
血流量が5.0 L/分なら、100 mLの50倍なので、約605 mL/分となります。
日常生活と結び付けて考えよう
- 運動中の筋肉では、なぜ安静時より酸素が放出されやすくなるのだろうか。
- 高地では肺胞の酸素分圧が低下する。酸素解離曲線から、血液に取り込める酸素がどう変化するか考えてみよう。
- 発熱時や体温低下時には、ヘモグロビンによる酸素の受け渡しはどのように変化するだろうか。
まず曲線が左右どちらへ移動するかを予想し、「肺で酸素を受け取ること」と「組織で酸素を手放すこと」の両面から考えると、生活現象とグラフを結び付けられます。
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