【高校生物基礎】血液凝固と線溶のしくみ【授業図鑑】

けがをして出血しても、しばらくすると血液の流出は止まります。
しかし、傷口をふさいだ血液のかたまりが、そのまま体内に残り続けるわけではありません。

血液には、必要なときに固まり、役目を終えると取り除かれるしくみがあります。
この「つくる」と「取り除く」を対比させることが、血液凝固を暗記で終わらせない授業のポイントです。

今回の記事では、血液凝固と線溶の流れを、高校生にも捉えやすい図と板書を使って整理します。

血液凝固と線溶のしくみ

血管が傷ついたときの止血と、その後の線溶は、次のように進みます。

  1. 血管が傷つき、出血する。
  2. 傷ついた部分に血小板が集まり、仮の栓をつくる(一次止血)。
  3. 血しょう中の凝固因子が連鎖的にはたらく。
  4. 糸状のフィブリンがつくられ、血小板の栓を網のように補強する。
  5. フィブリンの網が血球を取り込み、血ぺい(血餅)が傷口をふさぐ(二次止血)。
  6. 血管の修復後、フィブリンが分解され、血ぺいが取り除かれる(線溶)。

皮膚の表面では、傷口から出た血液や組織液などが乾燥し、かさぶたができます。
血ぺいそのものが単に乾燥したもの、と説明し切らないようにしたいところです。

「何が何に変わるか」を押さえる

凝固因子の多くは、ふだんから血しょう中に存在しています。
血管や組織の損傷をきっかけに凝固因子が次々と活性化し、カルシウムイオンなども関わりながら反応が進みます。

高校生物基礎では、次の二つの変化を軸にすると整理しやすくなります。

  • プロトロンビン → トロンビン
  • フィブリノーゲン → フィブリン

プロトロンビンが活性化されると、酵素であるトロンビンになります。
トロンビンは、水に溶けるフィブリノーゲンを、糸状で水に溶けにくいフィブリンへ変化させます。

線溶では、血液中のプラスミノーゲンが活性化され、フィブリンを分解する酵素であるプラスミンになります。

  • プラスミノーゲン → プラスミン
  • フィブリン → 分解

「トロンビンがフィブリンをつくる側、プラスミンがフィブリンを分解する側」と対比すると、二つのしくみを混同しにくくなります。

教科書によって扱う用語の詳しさは異なります。
まずは、フィブリンがつくられて血餅が生じることと、フィブリンが分解されて血餅が取り除かれることを確実につなぎ、必要に応じて酵素や凝固因子へ広げるとよいでしょう。

血ぺいと血栓を区別する

血液凝固は、出血を防ぐために欠かせないしくみです。
一方、血管内の不適切な場所に血液のかたまりができると、血栓と呼ばれます。

血栓によって血流が妨げられると、その先の組織へ届く酸素が不足します。
冠動脈が詰まれば心筋梗塞、脳の血管が詰まれば脳梗塞につながることがあります。

長時間同じ姿勢を続けると、脚の深い静脈で血流が滞り、血栓ができることがあります。
その一部がはがれて血流に乗り、心臓を経て肺動脈をふさぐのが肺塞栓症です。
飛行機だけでなく、長時間動きにくい状況で起こり得るため、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれます。

この内容は、血液凝固を単なる反応式ではなく、健康や生活とつながる調節のしくみとして考えるきっかけになります。

授業づくりのポイント

板書では、物質名を並べる前に「つくる」と「取り除く」の二方向を大きく示すと、全体像を捉えやすくなります。
その後で、生徒に矢印をたどらせながら、次の三点を言葉で説明させます。

  • 一次止血と二次止血は、何が違うのか。
  • トロンビンとプラスミンは、それぞれ何にはたらくのか。
  • 凝固だけでなく線溶も必要なのはなぜか。

「物質名を答える」だけでなく、「何が、何に、どのようにはたらくか」を説明させることが、理解を確かめるポイントです。

探究への手がかり

血液凝固と線溶は、二つの反対向きのしくみが釣り合うことで成り立っています。授業では、次のような問いから探究を広げられます。

  • 線溶が起こらなかったら、血管内では何が起こるだろうか。
  • 反対に、血液が固まりにくくなったら、どのような問題が生じるだろうか。
  • 長時間同じ姿勢を続けると血栓ができやすくなるのは、なぜだろうか。
  • 「固めるしくみ」と「溶かすしくみ」は、どのようにして必要な場所だけではたらくのだろうか。

最初に予想を図で表し、血液凝固と線溶の資料を比較して考えを修正させると、恒常性を「一定で動かない状態」ではなく、「相反する作用が調節されている動的な状態」として捉えられます。

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