【高校生物基礎】血液の成分【授業図鑑】

ヒトの体では、細胞を取り巻く体液の状態が一定の範囲に保たれることで、恒常性(ホメオスタシス)が維持されています。そ
の体液のなかでも、全身を循環して各部をつないでいるのが血液です。
血液は、消化管から吸収された栄養分や肺で取り込んだ酸素を細胞へ届けます。
その一方で、細胞から生じた二酸化炭素や老廃物を受け取り、肺や腎臓などへ運びます。
さらに、病原体から体を守ることや、傷ついた血管からの出血を止めることにも関わっています。
こうした多様なはたらきは、一つの成分だけで行われているわけではありません。
血しょう、赤血球、白血球、血小板が、それぞれ異なる特徴をもち、役割を分担しています。
今回の記事では、血液の各成分について、構造・大きさ・数・はたらきを比較しながら理解する授業のポイントを、これまでの授業実践をもとに紹介します。
血液の役割を、三つの言葉で捉える
血液の成分を個別に学ぶ前に、血液全体の役割を確認しておくと、その後の学習がつながりやすくなります。授業では、次の三つの言葉で整理できます。
- 運ぶ:酸素、二酸化炭素、栄養分、老廃物、ホルモン、熱などを運ぶ
- 守る:白血球や抗体などが、病原体や異物から体を守る
- ふさぐ:血小板と血液凝固因子が、傷ついた血管からの出血を止める
はじめにこの全体像を示しておくことで、それぞれの成分を「覚えるべき四つの用語」ではなく、「生命を維持するために役割分担するチーム」として捉えられます。
液体成分と有形成分
血液は、液体成分である血しょう(血漿)と、有形成分である赤血球・白血球・血小板―血球から成り立っています。
血液を抗凝固剤とともに試験管に入れて遠心分離すると、上部には淡黄色の血しょうが、下部には主に赤血球が集まります。
その境界付近には、白血球と血小板を多く含む薄い層が見られます。
体内を循環する血液では、体積のおよそ55%が血しょう、残りのおよそ45%が有形成分です。
有形成分の大部分を占めるのは赤血球です。
なお、赤血球と白血球は細胞ですが、血小板は骨髄にある巨核球という大型の細胞から生じた細胞質の断片です。
高校生物基礎では三者をまとめて血球として扱うことがありますが、構造上の違いを補足すると、血小板が核をもたない理由にもつながります。
四つの成分を比較する
授業では、各成分を一つずつ説明するだけでなく、同じ観点で比較することが大切です。
| 成分 | 構造・大きさの目安 | 血液1mm³中の数の目安 | 主なはたらき |
| 血しょう | 淡黄色の液体 | ― | 物質の運搬、浸透圧やpHなどの維持に関わる |
| 赤血球 | 直径約7〜8µm、中央がくぼんだ円盤状、核をもたない | 男性約500万個 女性約450万個 |
ヘモグロビンによる酸素の運搬 |
| 白血球 | 赤血球より大きいものが多く、核をもつ。大きさは種類により異なる | 平均約7,500個 | 病原体や異物から体を守る |
| 血小板 | 直径約2〜4µmの小さな細胞質の断片、核をもたない | 約20万〜40万個 | 傷ついた血管に集まり、止血に関わる |
1mm³は1µLと同じ体積です。
また、血球数の基準範囲は、年齢、性別、体調、測定方法や検査機関などによって異なります。
授業では数値そのものの暗記だけを求めるのではなく、「赤血球は非常に多い」「白血球は赤血球より少ない」「血小板は赤血球より小さい」といった相対的な関係を読み取らせたいところです。
血しょう―物質を運び、体内環境を支える液体
血しょうは淡黄色の液体で、血液のおよそ55%を占めます。
その約90%は水で、残りにはタンパク質、無機塩類、栄養分、ホルモン、老廃物などが含まれています。
血しょうの主な役割は、さまざまな物質を運ぶことです。
消化管から吸収されたグルコースやアミノ酸、細胞から生じた老廃物、内分泌腺から分泌されたホルモンなどは、血しょうによって運ばれます。
二酸化炭素の多くも、血しょう中で炭酸水素イオンなどの形になって運ばれます。
また、血しょうに含まれるアルブミンなどのタンパク質は、血管内外の水分量に関係する浸透圧の維持に関わります。
血しょうは単なる「血球を浮かべる水」ではなく、細胞を取り巻く体内環境を支える重要な成分です。
赤血球―酸素を運ぶための形と構造
赤血球は、中央部の両面がくぼんだ円盤状をしています。
直径は約7〜8µmで、成熟したヒトの赤血球には核がありません。
中央がくぼんだ形は、体積に対して表面積を大きくし、酸素を効率よく出し入れすることに適しています。
また、赤血球は柔軟に変形できるため、自分の直径よりも細い毛細血管を通過できます。
血液1mm³中の赤血球数は、成人男性で約500万個、成人女性で約450万個が目安です。
ほかの血球と比べて非常に多いことからも、全身の細胞へ酸素を届けるために大量の赤血球が必要であることが分かります。
赤血球の寿命は約120日です。
古くなった赤血球は、主に脾臓などでマクロファージに取り込まれ、分解されます。
その一方で、骨髄では新しい赤血球が絶えずつくられています。
白血球―一種類ではない防御の担い手
白血球は核をもち、ヘモグロビンをもちません。
大きさや形は種類によって異なりますが、赤血球より大きいものが多く、血液1mm³中に平均約7,500個含まれています。
赤血球より数が少ないからといって、役割が小さいわけではありません。
白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球などがあり、それぞれ異なる方法で生体防御や免疫に関わります。
白血球はアメーバのように形を変えて移動できます。
この運動を遊走といいます。
炎症が起きた場所へ向かい、血管壁を通り抜けて組織へ移動できることも、白血球の重要な特徴です。
血小板―血管の傷をふさぐ小さな断片
血小板は、直径約2〜4 µmの小さな成分で、核をもちません。
血液1mm³中に約20万〜40万個含まれています。
血小板は、骨髄にある巨核球という大きな細胞の細胞質が分かれて生じます。
教科書には「骨髄や脾臓の断片から生じる」と表現されていますが、骨髄の巨核球から生じるというのが適切です。
血小板は血液凝固で働きます。
授業では「大きさ・数・役割」を関連付ける
血液の成分は、名称と機能を一対一で暗記する内容になりがちです。
しかし、大きさ、数、形、役割を関連付けると、それぞれの特徴に理由があることが見えてきます。
例えば、次のような流れで考えさせることができます。
- 四つの成分を、まず大きさの順に並べる。
- 血液1mm³中の数を比較する。
- なぜその大きさや数が必要なのかを、役割から考える。
- 形や核の有無が、はたらきとどう関係するかを説明する。
赤血球を約500万個、白血球を約7,500個として比べると、白血球1個に対して赤血球はおよそ数百個あります。
実際の個数分の模型を用意することは難しくても、比を縮小してビーズやカードで表せば、「血液像ではなぜ赤血球ばかりが見えるのか」を実感できます。
また、同じ縮尺で赤血球・白血球・血小板を描かせたり、役割を伏せた血球の図から機能を予想させたりする活動も有効です。
「形にはたらきが表れている」という、生物学に共通する見方を育てることができます。
探究学習への手がかり
血液の成分を探究的に扱うときは、名称を調べるだけでなく、構造と機能の関係や数の違いがもつ意味に注目させることが大切です。
例えば、次のような問いが考えられます。
- 赤血球は、なぜ中央がくぼんだ形をしているのだろうか。
- 成熟した赤血球が核をもたないことには、どのような利点と不利点があるだろうか。
- 白血球は赤血球よりはるかに少ないのに、どのようにして病原体の侵入場所へ集まれるのだろうか。
- 血小板による一次止血だけでは、なぜ十分ではないのだろうか。
- 血しょう中のタンパク質が減少すると、血管内外の水分移動にどのような影響が出るだろうか。
- 赤血球・白血球・血小板の数が大きく増減すると、それぞれどのような不都合が生じると予想できるだろうか。
最初に形や数だけを示して役割を予想させ、資料や観察結果をもとに考えを修正させると、「構造にはどのような意味があるのか」という探究につながります。
顕微鏡観察を行う場合は、市販の血液塗抹標本や画像資料を用い、赤血球・白血球・血小板の見え方と実際の数の違いを比較する活動も考えられます。
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