【ブログでわかるサイエンス】#3 免疫は暴走する?! ―アレルギーと自己免疫疾患―【生物学】
前回まで2回にわたって、私たちの体を守る「免疫」のしくみを紹介してきました。
本来、免疫はとても優秀な“防衛システム”として働いてくれます。
ところが、時には 免疫が“働きすぎる”ことで、かえって体に不都合が起きる ことがあります。
今回はその代表例として、アレルギー と 自己免疫疾患 を取り上げながら、「免疫の暴走」についてやさしく解説していきます。
まずは免疫の復習から
体液性免疫
体液性免疫では、リンパ球の一種である B細胞 が 抗体産生細胞 に分化し、やっつけるべき敵=抗原 をつかまえるための 抗体 をつくります。
抗体は、侵入した抗原を“一網打尽”に捕まえるタンパク質。
これが 抗原抗体反応 です。

細胞性免疫
細胞性免疫は、抗体を使わず、キラーT細胞 が“抗原に感染した細胞そのもの”を丸ごと攻撃して排除する反応です。

アレルギー=「本来は無害なものに全力で反応してしまう」
アレルギーとは、本来は無害な物質を“危険な敵”だと誤認し、免疫が過剰に反応してしまう現象をいいます。
この敵として扱われてしまう物質を アレルゲン と呼びます。
アレルゲンの例
◆花粉
◆食物(卵・小麦・そば など)
◆金属
◆ダニ・ハウスダスト
◆動物のフケ
ちなみに、食品成分については現在、以下の図にしめす食材がアレルギー表示対象として示されています。

これらは通常、体に害はありません。
しかし免疫が過敏になっていると、次のような“過剰な攻撃”を引き起こします。
◆くしゃみ
◆鼻水
◆発疹
◆かゆみ
◆呼吸困難
アナフィラキシーとは?
アレルギー症状の中でも、短時間で全身に急激な症状が広がるもの をアナフィラキシーといいます。
例えば、こういった症状があります。
◆じんましん
◆喉の腫れ
◆呼吸困難
◆血圧低下、意識障害(=アナフィラキシーショック⋯命に関わる場合があり、迅速な対応が必要です)
自己免疫疾患
「免疫寛容」が崩れると、免疫は“味方”を攻撃してしまいます。
本来、免疫は、自分の細胞は攻撃しない(=免疫寛容)という非常に重要なルールの上で働いています。
しかし、この仕組みが崩れると、免疫が“味方の細胞”を敵と誤認して攻撃します。
これが 自己免疫疾患 です。
自己免疫疾患の例
◆Ⅰ型糖尿病
すい臓のB細胞が攻撃され、インスリンが出せなくなる。
(※免疫で働くB細胞とは別の細胞です)
◆関節リウマチ
関節の滑膜が攻撃され、炎症・痛み・変形が起こる。
◆重症筋無力症
筋肉ではなく、神経と筋肉の接合部(受容体)に自己抗体が作用することで筋力低下が起きる。
◆バセドウ病 / 橋本病
甲状腺に対する自己抗体が働く。
いずれも共通点は、「敵ではないのに、免疫が“敵だ”と判断してしまう」=誤作動による自己攻撃という点です。
免疫が暴走する原因は?
ひとつの理由で説明できるものではありませんが、一般的に考えられているのは次のような要因です。
◆遺伝的な体質
◆幼少期の生活環境
◆ストレス・睡眠不足
◆生活リズムの乱れ
◆感染症や環境化学物質
◆腸内環境の乱れ
◆免疫バランスの偏り
ポイントは「免疫は強ければよい、弱いと悪い」という単純な話ではなく“バランス”の問題であるということです。
今日の問い
あなたの最近の体調の“敏感さ”は、免疫のどんなクセと関係しているでしょうか?
関連記事:免疫の基礎
前回の記事はこちらから読むことができます。
【ブログでわかるサイエンス】#1 免疫のしくみの基礎・基本【生物学】
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