「気になる」「困る」から始まる探究(3)〜調べ学習を探究につなげるには?〜

「探究学習では、まず問いを立てましょう」

そう言われても、何を問いにすればよいのか、すぐには思いつかないことがあります。

でも、気になったことを調べるうちに、もっと知りたいことや、確かめたいことが見えてくる場合もあります。

今回は、非常勤講師として以前勤めていた学校での出来事から、調べ学習と探究のつながりを考えてみます。

生徒から、発表スライドの相談を受けて

ある日、授業を担当していた高校3年生の文系クラスの男子生徒から、こんな相談を受けました。

「先生、探究の発表用のスライドをつくったので、一度見てもらえませんか?」

彼は、外国語学部のある大学への進学が決まっていて、海外で使われるジェスチャーについて調べていました。

理科を担当する私に相談してくれたことを、少し意外に思いました。

それでも、話を聞くうちに力になれればと思い、昼休みに理科準備室で、一緒にスライドを確認しました。

スライドには、調べたジェスチャーの意味などが整理されていました。

ただ、「どのようなジェスチャーがあるか」という情報の紹介が中心で、彼自身が何を知りたいのか、そこから何を考えたのかは、まだ見えにくい内容でした。

そこで私は、「よくまとまっているけれど、探究になっていないのでは?」と伝えました。

今振り返ると、もう少し、次の一歩が見える言葉で伝えられたかもしれません。

彼が調べてまとめたことは、その先の探究を進めるための大切な土台だったからです。

調べたことを、コミュニケーションの場面に結びつける

当時の私は、探究では、まだ答えのわからない問題について、すでに知られている事実を整理し、自分なりに考えることが大切だと思っていました。

そこで、彼が調べた内容をもとに、次のようなことを考えてみてはどうかと助言しました。

  • ジェスチャーの意味を知っていると、どのような誤解を避けられるだろうか。
  • 意味を知らずに使うと、どのような行き違いが起こるだろうか。
  • 相手と誤解なくやり取りするには、どのようなことに気をつければよいだろうか。

ジェスチャーの知識を、実際に人と関わる場面に結びつけて考えてもらおうと思ったのです。

その後、彼は自分なりに考え、実際の発表では、外国の人とのコミュニケーションで気をつけたいことを、自分の言葉で説明していました。

この変化は、調べた情報をもとに、自分の考えを深める一歩だったと感じています。

「自分の考え」を、根拠と結びつける

ただし、調べた内容に自分の感想を付け加えれば、それだけで探究が深まるというわけではありません。

大切なのは、「なぜ、そう考えたのか」を、調べた情報や確かめた事実と結びつけることです。

たとえば、今回のテーマをさらに深めるなら、次のような問いが考えられます。

「同じジェスチャーでも、使われる場面によって受け止め方は変わるのだろうか」

「意味がわからないとき、相手に確認する方法には、どのようなものがあるだろうか」

こうした問いについて、複数の資料を比べたり、その文化や言語に詳しい人に話を聞いたりすると、考えるための手がかりが増えていきます。

また、「外国の人はこう受け取る」と、一括りにしないことも大切です。

国や地域だけでなく、相手との関係や、その場の状況による違いにも目を向けたいところです。

わかったことと、まだ十分に確かめられていないことを分ける。

それも、探究を進めるうえで大切な姿勢だと思います。

問いは、調べながら育ててもよい

探究の進め方は、「問いを立てる→調べる→整理・分析する→まとめて伝える」という流れで説明されることがあります。

ただ、最初からはっきりした問いを立てることに、難しさを感じる生徒もいるのではないでしょうか。

そのようなときは、まず、気になることを調べてみる。

そこから、次のように考えてもよいと思います。

  • 調べてみて、意外だったことは何か。
  • 資料によって、説明が違うところはないか。
  • もっと詳しく知りたいことは何か。
  • 自分の生活や、人との関わりにどうつながるか。
  • 何を確かめれば、疑問に近づけそうか。

調べることで問いが生まれ、その問いをもとに、もう一度調べたり確かめたりする。

そんなふうに、行き来しながら探究を進めてもよいのではないでしょうか。

もちろん、「何に役立つか」「どんな問題を解決できるか」という視点だけに絞る必要もありません。

「なぜ、そうなるのだろう」「この違いはどこから生まれるのだろう」という関心から、問いを深めることもできます。

まとめ:調べたことを、次の問いにつなげよう

調べ学習は、知識を得て、自分の関心を深めるための大切な活動です。

そこから探究につなげるには、「何がわかったか」に加えて、「何がまだわからないか」「次に何を確かめたいか」を考えてみましょう。

そして、自分の考えを、調べた情報や確かめた事実と結びつけていく。

その過程で、最初の問いが変わったり、新しい問いが生まれたりすることもあります。

最初から完成した問いを用意する必要はありません。

まずは「気になる」ことを調べてみる。

そこから生まれた疑問を大切にし、次の一歩を考える。

生徒とのやり取りを振り返りながら、そんな探究の進め方も大切にしたいと感じています。

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