資源・エネルギー・環境教育雑記帖(1)〜今なぜ「資源・エネルギー・環境教育」が必要か〜

2023年より全国でエネルギー教育に関する講演の機会をいただきました。
また、2023年より全国の仲間と集まって、エネルギー教育に関する研究を行っています。
そのための準備や研究、講演を続けていく中で、多くの方がエネルギー問題やエネルギー教育に関心をお持ちであることをひしひしと感じています。
ただ、「どのようにエネルギー教育を行えばよいかわからない」と現場の学校の先生は思われていませんでしょうか?
そこで、不定期ではありますが、弊社代表が資源・エネルギー・環境教育に関連し、文献を調べて得た知見や思うことなどを綴って参ります。
駄文ではありますが、これから綴る記事が一人でも多くの先生の教育実践にお役に立つようでしたら、この上ない喜びはございません。

エネルギーを巡る昨今の状況

2021年よりウクライナで戦争が続いています。
その影響があってか、現在まで日本でも石油や食料品の価格上昇が問題となっています。
これらは人間が生きる上で必要な「資源」であります。
その資源を利用して、生きるために必要な動力である「エネルギー」を生み出しています。
しかし、昨今の日本は食料自給率が低く、石油・石炭・天然ガス・鉱物などの資源に乏しいのが現実。
中でも石油・石炭・天然ガスについては、世界各国の中でも使用量が上位に入るものの、99%以上を輸入に頼っています。
こんな状況で日本という国はこれからも持続可能といえるのでしょうか?

資源・エネルギー・環境教育の意義

そもそもなぜ今、資源・エネルギー・環境教育が必要なのでしょうか?
以下の3点にまとめられます。

  • 資源・エネルギーは人類が生きる上で必要なため。
  • 持続可能な社会を実現するため。
  • 児童・生徒を「持続可能な社会の創り手」として育成するため。

「持続可能な社会」という言葉は国連のSDGs(持続可能な開発目標)や、文部科学省の学習指導要領の中でも明示されています。

エネルギーの捉え方

物理学においてエネルギーとは「仕事をする能力」と定義されています。
また、「仕事」というのは物体に加えた力×移動距離で定義されています。
しかし、社会的な問題も考える上で弊害が出てきます。
そこで、「エネルギー=様々な現象・活動を生み出す能力」と拡大解釈するというのはいかがでしょうか。

物理学の一分野である熱力学において、エネルギーは「系」「外界」という概念で考えます。
「系」というのは捉える対象、「外界」というのは「系」以外のものを指します。
熱力学は「系」と「外界」でのエネルギーのやり取りや、「系」におけるエネルギーの活用について考えています。
この熱力学の概念は、資源・エネルギー・環境問題を考える上で大いに役立ちます。

資源・エネルギー・環境について考える枠組み

これまで「エネルギー教育」という言葉も使ってきましたが、この記事のタイトルは「資源・エネルギー・環境教育」としています。
そうするのは、資源・エネルギー・環境の問題は関連していて、三位一体で考えることで解決に繋がると考えているからです。
資源・エネルギー・環境の関係は下の図のようにまとめられます。

この枠組みを使うと、一見つながりがないように見えるものも、実は同じ原理で機能していることがわかります。

例えば、自動車は石油という資源を燃やし、そこで得た熱エネルギーを使ってエンジンを動かし、仕事をします。

発電においては、石油・石炭・天然ガスといった資源、あるいは光などの自然現象からエネルギーを得て、タービンを回し、電気を生み出し、仕事をします。

呼吸においては、食料という資源と酸素を細胞の中で化学反応(代謝)させ、エネルギーを得ます。
そのエネルギーはATPという物質に蓄えられ、さまざまな生命活動仕事)に使われます。

実はこれらのことは、外界にある資源からエネルギーを取り出し、系の中でエンジンを動かす原理に当てはまるのです。
広瀬立成先生の著書「地球環境の物理学」では、こうして考えられたエンジンを「環境エンジン」と述べられています。

あと、自動車のエンジンを動かす際は排気ガスや排熱が生じるように、どんな活動であっても必ず排熱や廃棄物が生じます。
その排熱や廃棄物が悪影響を及ぼすことが環境問題となります。

この「環境エンジン」の原理をもとにすると、資源・エネルギー・環境問題は三位一体で考えなければなりません。

  • すぐ枯渇しないように資源を有効活用にするにはどうするか?
  • 排熱や廃棄物を極力出さずにエネルギーをどう活用するか?
  • 生じた排熱や廃棄物が環境に悪影響を及ぼさないようにするにはどうするか?

これらのことは別個に考えられていたこともあるようですが、実は互いに関連しています。
そういったことから、エネルギー教育よりも「資源・エネルギー・環境教育」という言葉を使っていこうと思う次第です。

次回の記事では中学校・高等学校の教科書における資源・エネルギー・環境の扱いについて、概略を綴る予定です。

 

稚拙な駄文ではございましたが、この記事あるいは資源・エネルギー・環境教育に関してご意見・ご感想・ご質問等がありましたら、当HP右上のお問い合わせフォームを通してご遠慮なくお知らせください。
ここまでご覧いただきありがとうございました。

文責:滝沢